涼宮ハルヒの憂鬱(最終回)

涼宮ハルヒの憂鬱 2 限定版 [DVD]

涼宮ハルヒの憂鬱 2 限定版 [DVD]

今期終了第7弾。今季どころかここ数年での最高品質…どういう体制で作りあげたんだ。
このアニメはエヴァ以降で大成功した久しぶりのマルチメディア戦略作品なんだろうな。正直、これ程の出来を見せられては「ブームに踊らされても良いや」と素直に感じてしまう*1。「ブラックラグーン」が原作をうまく拡大解釈した作品とすれば、「涼宮ハルヒの憂鬱」は(原作を”素材”として扱い)あくまでアニメーションとしての品質を徹底追求した作品なのだろう。少なくとも、この2作はここ数年多発した粗製濫造アニメに対しては活を入れた作品になったと思う。
で、ハルヒ出現による影響をつらつら考えてみる。一つは、この人気は「作品そのものの評価」ではなく「アニメ(=制作会社の技術力)に対する評価」によるものが大であるということ。「涼宮ハルヒの憂鬱」という作品はアニメ化に値するだけ前評判も高かったが、当時の既読者の評価は無条件で絶賛するほどのものでもなかったと思う。それがアニメ放映で全体評価が跳ね上がったわけだけど(既刊小説が店頭一掃なんて聞いたことがない…)、それは「内容が良かったから」ではなく「EDダンスがすげえ」「動画やネタの仕込みもすげえ」という理由で購入した人が圧倒的と思う。言ってみれば、原作の出来はそこそこでも、原作以外の部分でカバーしてしまうことで二段ジャンプ的売上を期待できるという前例ができた(ハルヒシリーズの出来が悪いといっているわけではないので、念のため)。勿論ビジネスモデルと呼ぶには極めて特殊事例だからそのまま受け取るわけにも行かないだろうけど。*2。ともあれ、アニメをイメージして原作を手にした人が失望しなければなあ、とちょっと心配。
もう一つはアニメ制作へのファンやスポンサーの要求水準が否が応でも上がってしまうこと。出来不出来の差はともかくとして、各アニメ制作会社の得意とする技法、アニメ化に関わるスポンサー、制作人員、そして何より予算等々によってさまざまな内容・品質の作品ができるわけだけど、本作品はアニメの根源である「動く」という部分において週一アニメにあるまじき品質を提供してしまっただけでなく、それ以外(画質、演出、脚本、ネタ)においても高水準を維持したまま走りきってしまった。「動き」が京アニの得意分野であることはアニメオタクでは有名だが、一般視聴者やスポンサーが「京アニ作品だからね。他社は別」と区別して理解してくれる可能性はかなり低い。だから、他社のアニメ関係者は「うらやましい」と同時に「懸念」と捕らえているんじゃないだろうか。当分の間、新規アニメの企画会議で「エヴァみたいなやつでマルチ展開して大もうけ」と合わせて「ハルヒみたいなやつで(略)」という言葉が飛び交い、現場担当者が頭を抱える日々が続くと思う。(すでに実現可否の原因が見えているなら話は別だけど。予算の桁が二桁違うとか、販売利益の幾ばくかが制作会社に還元されることになっているとか)
ともあれ、今後の一つの指針になる作品であることは確実。アニメに関わる各種業界の皆様、「XXX(←お好みの条件や障害をどうぞ)がクリア出来れば、俺だって…」と思われる方も多々いらっしゃると思いますが、本作の成功原因を分析いただき、日本アニメの更なる発展に寄与していただければ、一人のアニオタとして幸せでございます。

*1:まあ昨今のユーザ傾向からすれば、第2期発表でもない限りは放映終了後半年も経たずブームも終わってしまうと思うけど

*2:原作者やプロジェクトに関わった企業は笑いが止まらないだろうけど