実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

映画監督 若松孝二 公式サイト
ベルリンで賞を取った&有名監督とはいえ、テーマがテーマだし3時間越えだし天気も悪いし、たいした入りではなかろう・・・でも1時間前に着いちまったし・・・と、劇場前で連れを待っていたけど、初回上映には「立ち見」札が立っているし、見る予定の2回目もどんどん客が劇場に入っていたんで、ひとまず慌てて座席指定を取ったけど・・・人気ありすぎだろ、これ(苦笑)。観客も、明らかに当時一緒に戦っていたような世代から、過去の事件としか知らないような世代、そして(おそらく映画好きの)カップルとえらく幅広い。
で、見ての感想だけど・・・予算不足と言われていたようだけど、とにかく役者さんの演技と監督&脚本の意図が見事すぎて、3時間があっという間だった。何より、森恒夫永田洋子の二人の演技が凄かった。特に永田洋子役の並木愛枝の鬼気迫る演技は、正直映画と分かっていても恐ろしかったほど。個人的ベストシーンは、総括や自己批判がエスカレートしたシーンではなく、はじめて遠山美枝子(坂井真紀)*1に詰め寄ったシーンのあまりに自然すぎる「・・・ちがうんだなあ〜」の所。正直、あれが本当に演技だったのかすら疑わしいほどに真に迫っていた。それこそ、そこらのタレント俳優には到底及びも着かない見事な演技だった。そんな彼女と森の二人の演技があったからこそ、劇後半の総括&自己批判の荒らしにもついて行けたんだろうな(いや、正確には引きずられた、かな)。カメラがずっと淡々と映像を作っていたから(これも評価できる)、まだ冷静に見ることが出来たんだと思うけど、この二人が目の前にいると想像しただけで、恐ろしくてぞっとする。・・・そしてそんな極限状態にならざるを得なかった彼らの精神的な閉塞感&圧迫感には多少なりとも同情してみたりして。認めたくはないかもしれないけど、どこか「もうダメだ」という認識が芽生えていたからこその、あの暴走だったのかな、と思ってみたり。「総括」と「自己批判」を繰り返した結果、最後はもはや「ギャグ」以外の何物でもない状態になりつつも、狂信者の如くムリヤリどうにか自身に理由をつけて自己正当化する用になるに至っては、笑ってよいのか悲しんだ方が良いのか。まあ、誰しも一歩間違えれば似たような状況になってしまうのだろうけど。
史実としてみた感想は、連合赤軍関連については新聞伝聞程度しか知らないのでよく分からない。ただ、中核派だの赤軍だのとよく分からなかった勢力図の系譜が、映画でおおざっぱでも説明してあったので助かった。想像以上の短期間で分裂統合があったんだな。・・・その段階で戦略的にかなり負けていた気もしないでもないけど。
ともあれ、大変刺激的&面白い映画であったことは間違いない。上映時間も全く気にならなかったし。実写系映画はあまり見ないんだけど、これは本当に見てよかった。*2

*1:仮にも有名女優にあの特殊メイクをさせたのも凄かった・・・。

*2:ただ、パンフが1,500円弱ってのが。いや、まあ現物見たら納得せざるを得ないけどね。