田母神氏の問題と文民統制

色々話題になっているんで、思うところをつらつらと。
マスコミが色々騒いでいるんだけど、冷静になって俯瞰してみると、どーにも田母神氏の方が筋が通っているように聞こえてならない(彼の意見に対する好き好きは別として)。むしろ、マスコミ側にとって都合の悪いことが多すぎてヒステリーを起こしているんじゃないかってくらいに感じる。なんせ、以前はあれほど「テレビ中継しろ!」と五月蠅かったはずなのに、今回の参考人招致で「テレビ放送を一切なくした」ことからしても、明らかに様子がおかしかった。
少なくとも、田母神氏の問題は「政府見解と異なる意見を大々的に発表したのは、当時の立場(元航空幕僚長)からすると”好ましくない”」という程度であって、政府や国家や自衛隊としての職分=国家を危険に陥れるような犯罪・反逆行為を行ったわけでないのは明白だ。つまり「罪」ではない。だから「政府見解と異なる意見を表明している軍人(=自衛隊上層部)は、その職から下りてもらう」という対応は至極まっとうであるし、職を解かれたことにより自動的に定年退職になった、という麻生総理の話も筋が通っている。
確かに、この発言に対して「気にいらない」と思う方は一定数いるとは思うし(特ア系の方とか朝日新聞とか)、そのことは別にいつもの話なので構わないと思う。そう彼等が思うことも否定しない。しかし、事実上「気に入らないから犯罪だ」「退職金は返還すべきだ」という状態に至っているのは飛躍に過ぎる。というか思想統制までやりたいのか、彼等は。(人権擁護法案といい、都合の良い表現規制といい、戸籍法の改正?といい、積極的に日本国家としての成り立ちを恐そうとしている共産ファシズムがいるんじゃないかと思いたくなる。)

シビリアンコントロール。軍隊の指揮権が文民によって統制されること。また、政治の軍事に対する有意を定めた制度。軍部の政治への介入や独走を抑止するためのもの。(広辞苑・第五版より)

文民統制の危機」とマスコミは書き立てているんだけど、文民統制の根本は「軍事力の行使に当たって、最終的な権限が文民=国民(=政治家)にある」ということである*1。別に田母神氏を持ち上げるつもりはないけど、抵抗もせず職を解かれ、すでに軍人(自衛隊員)ですらない彼が参考人招致に素直に応じている状況は、まさに文民統制がしっかり行われている証拠になっているんではなかろうか・・・というか、むしろ「文民統制」という言葉を錦の御旗にして、異常な拡大解釈をされているのではないかと心配になってくる*2
それに、「文民統制」とは「戦力行使の最終決定を国民/政治家が握っている」ということであって、「何があっても戦争をしないこと」は決して「文民統制」の本質ではない。それこそ、「様々な状況から判断して戦力の行使が必要と思ったら、全責任を持って行使を命令すること」も「文民統制」なのだ。正直、今「文民統制の危機」と叫んでいる政党やマスコミは、その認識と覚悟があった上で叫んでいるのだろうか。戦争なんて絶対にやりたくはないけど、今回の騒動を見ていると「こういう決定的な判断すらしなくてはいけない立場」の彼等には、そういうものがスッポリ欠けている気がしてならない。

国会の委員会に参考人を呼び意見を聴くこと。国会の委員会は、審査または調査のために必要があるときには、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。参考人として招かれるのは、政府参考人のほか、専門家や利害関係者など。(時事用語のABCより)

さらに言えば、マスコミの言では「参考人招致の際に妄言ばかり述べて、謝罪の意識すらなかった」という話だけど、そもそも参考人招致とは、その字のごとく「意見を聞く場」であって裁判所でも弾劾の場でもない。従って、その趣旨に照らし合わせるのであれば、むしろ田母神氏の発言は「彼自身の意見を述べる場」として当たり前の対応を行ったに過ぎない。勿論、その態度が「気にくわない」「空気読め」と思う方も一定数いるだろうけど、そんな方の自尊心を満足させる場では決してないのだ。腹が立とうが、気にくわなかろうが、参考人の意見は意見としてちゃんと拝聴しなくてはいけない。
田母神氏の当時の立場からすれば「不適切な発言」であった点は確かであり、それを理由に解任させられたというのも、政府方針からして納得がいく。しかし、じゃあそれは「罪なのか」となると「NO」と言わざるを得ない。そう考えると、今のマスコミや民主党の過剰なまでの反応の方がむしろ恐ろしい。一体、彼等は日本をどんな国に仕立て上げたいのだろうか。また一部で言われ始めているけど、戦後60年に渡って延々と続けてきた「戦後のバランスを欠いた歴史教育」のゆがみが、今ここで一気に噴出してきているんじゃないかとも思う(ムリヤリ押さえつけていけば、意図しなくてもいつかは大反発が発生するのは、過去の様々な歴史が証明している)。
まあ、自衛隊論・平和論・歴史解釈論に一石が投じられるきっかけになったのだから、当事者達には是非冷静に議論を積み重ねて欲しいと思う。

*1:太平洋戦争時が「軍部の暴走によって引き起こされた」という前提を教訓にしている。

*2:「エコ」「自然保護」の名目で、他者の心身を傷つけることを罪とは思わない(むしろ英雄的行為と思ってしまう)ことと同類。