戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない

MC☆あくしずで連載されている速水螺旋人によるコラム「ロシア妄想主義概論」。毎回ディープなロシアネタで楽しませてくれるコラムなのだが、あくしずVol.10の回で紹介されていた一冊がコレ。おそらく本文中で『闘う女の子というモチーフに敏感な我々オタク、なかでもあくしず読者は読むべき一冊だ』とか『皆コスプレ美少女が好きなだけじゃないでしょ?マスト読め!』と徹底的に煽られなければ、amazonで取り寄せてまで読んだ本じゃなかった。
内容は第二次世界大戦(正確には独ソ戦とか「大祖国戦争ソ連側呼称)」)に従軍したロシア人女性達のインタビュー集。速水氏や著者のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチも言っているが、インタビューという性質上「自分語り」になってしまい、真実性という部分においてはやや怪しいところもある・・・が、こういうのは自身をドラマの主人公にしてしまうのはありがちであるし、本書の性質上「語られた行動が事実かどうかは本質ではない」のだろう。実際、戦争を記した書籍は沢山出ているのだが、「前線で様々な立場で従軍した女性達の言葉」に限定すれば恐ろしく少ないと改めて思う。"銃後の守り"的な文脈ならば日本でもいくつか書籍等はあるけど、「最前線」となるとほとんど無い。そう言う意味において、この本に記されているインタビューの内容は、確かに速水氏の言うとおり必読の内容だと思う。実際、女性と最前線というテーマにおいては、個人的に色々想像して頭で理解していたと"思いこんでいた"部分はあったけど、このインタビューに書かれている内容は間違いなく「女の目による戦争(最前線)」の記録であり、甘い妄想はかる〜く吹っ飛ばされた感じがある。でも、それはただの妄想にたいして正しい方向にカウンターが当てられたときの衝撃であって、そこから改めて色々想像(妄想)展開するのもまた日本のオタクの正しい姿なのだろう。凄惨な場所であるからこそ、日常ではつまらない些細な女性的発見の記述をみると、すこしほっこりしてしまう。
同様のインタビュー本をこの作者は出しているようなので、機会があったらまた読んでみよう。