サマーウォーズ

映画「サマーウォーズ」公式サイト
ある意味、ばあちゃん萌え、ないしはばあちゃんの男気に惚れる映画。
細田監督の前作「時をかける少女」の時ほどのインパクトは、物語としてはなかった。むしろ前編オーソドックスな展開と考えても差し支えない。少なくとも、アニメや映画を見慣れた人なら、後半の展開は想定していた人は多いと思う。でも、だからこの作品が凡作かどうかは別だ。オーソドックスな展開=大衆に理解しやすい内容ということであるし、この映画自体が「電脳戦争」に重きを置いているのではなく、今の日本ではなかなか見ることが出来ない「大家族&血族の絆」にスポットをあてていることがよりノストラジックを生むのであり、一般観客の関心を引き寄せる一因でもあるのだから。
まあ、昨日大人数で楽しいパーティーを体験したからこそ、そういう思いが強くなっている一面は否定しないけど。一族郎党集まってわいわいやっているシーンはとても楽しい。そこに、各自の職能を生かしたヘルプが入ってくるというのも王道とはいえ荒唐無稽な楽しさも引き出している。人によっては、たった一人の人物によって、国家レベルの治安維持が保たれたというシチュエーションに興ざめする人も居るとは思うけどね。でも、直筆封筒の山の前で黒電話を使ってずっと説得を続けるあのシーンは、この映画で一番のシーンだと個人的には思う。結局は、人と人とのつながりがどこまで行っても一番大事、ということをストレートにあらわしているシーンなのだから。そして、それこそがこの映画のテーマであるわけで。
あと、やっぱり「理系のバトルシーンは絵面的にきびしいなあ」と思った。通常のバトルは、肉弾であろうがカードデュエルであろうが、絵としてはとても見えやすい(キングガズマ戦とか夏希先輩戦とか)。でも、プログラム勝負となると見た目はさっぱりわからない。実際にはものすごいことをやっているんだけど、傍目にはさっぱりわからない。結果、「時間と演算速度」という枠組みにはめてその凄さを見せるしかないということになる*1。主人公の小磯くんや、侘助自身の理数プログラミング能力は突出しているのは言葉として説明されているけど、なかなかそれが絵として見えにくかったのが残念であると同時に、まだまだ表現改良の余地があるところなのかなとも思う(難しい課題とは思うけど)。
総じて、良作ではあると思う。電脳社会をベースにしているので違和感をもたれる方も多いだろうけど、基本は「人間の家族とその絆」がテーマになっている物語なので、肩肘張らずに見てよいと思う。

*1:エヴァンゲリオンでメインコンピューターをハッキングされたときに、赤城博士が「まだ5秒あるわ」と言ったシーンと同じ。