東京都青少年健全育成条例の戦い

最初の山まであと数日。そこで民主党がどんな選択を取るのかにかかってくるわけだけど。月曜日は有識者の方々が民主党総務部会でヒアリングをするらしいし、その後に都庁で集会をするという。…流石に平日、しかも昼間だと身動きが取れない。病気になれば会社は休めるけど、集会にだって出られるはずもなく。沢山集まってくれるといいんだけど…。
で、今回の件で同じような話題を挙げているブログやHPやニュースサイトを見に行っているんだけど、基本的なところで誤解や認識不足が多いなあというのが一点。なので、個人的な意味も含めて整理。

言葉の定義関連

  • 児童ポルノ
    • 実在の子供に対して性行為を強要しているような写真やビデオ。ただ、海外では「人身売買」「殺人」の意味合いが非常に強い言葉であるため、日本とは意味合いも罰則も大きく異なる。また、あくまで「実在の子供」が対象*1であるため、「二次元児童ポルノ」「マンガ児童ポルノ」「まんがやアニメの児童ポルノ」という言葉は存在しない。もしニュース等でこれらの言葉を使用している場合”悪意ある造語”か”当局からリリースされた内容の丸写し”と見て良い。
  • 児童ポルノ法」
    • ”現実の児童”を”保護する”ための法律。決してキモオタ・ロリを逮捕する法律ではない。
  • 「野放しである」「蔓延している」
    • あからさまなミスリードであり事実ではない。本物の児童ポルノはすでに法律で厳しい罰則規定があるし、創作物でも業界の自主規制(ゾーニング、成人向け表示)がすでに浸透している。また、そのようなものを得たい場合、然るべき場所に自ら求める必要があり、いわゆる未成年者が容易には入手できない。

状況関連

  • 自公が味方と聞いたけど
    • 全くのデマ。少なくとも、この一件については「民主が味方」「自公が敵」。信条的に複雑な気分になる方もいるだろうけど、もうそんなことで悩む段階はとうの昔に終わっている。一時休戦&昨日の敵は…な形で考えて欲しい。
  • 東京都だけの話でしょ
    • この条例は東京だけだが、可決すれば追随する道府県はかなりの数に上ると言われている。実際、大都市圏を抱えるところはほぼ例外がないと言っても良い*2。あちこちで散々語られているが、これは「国会で通せなかった表現規制法案を、別のルートで突破させようとしている」もの。一種の代理戦争。
    • 日本の大手流通は実質的には二社しか存在しない(ニッパン、トーハン)。また、図書系の会社の多くは東京に集中している。そのため、水道の元栓を閉められてしまうのと同じことになる。
  • キモオタ・ロリは死ねばいいから、修正賛成
    • この法案は「青少年に有害(悪影響)と思われるものを排除する」条例案。なので、エロもグロもホラーもトラウマもリアルも空想も性別も関係なく全部禁止になるおそれがある*3。運用次第…とも言えるが、現在の委員は「反対意見を提出した人は精神疾患者」「反対派に対して説明する必要はない。当たり前だから」「撲滅し、清浄な東京にする」等の発言を繰り返す人々であることを念頭に置いた方が良い。「今は大丈夫だけど、人が変わればやり方も変わる」のは、歴史が証明している。
  • ネット規制などの問題
    • ネットに関してはあまり話題になっていないが、その極端なフィルタリング方針とキャリア・関係各社への義務要請が非常に強い。こちらについては、ネットワーク業界で反対の方向で動いているらしい。
  • 青少年の教育に「行政が介入する」異常さ
    • 要するに「今の親は子供をしつける、育てる能力がない」から「都が育てよう」というもの。全日本主婦連が、この条例案に対して反対する最大のポイント。
    • 都民に対しては、この条例に則った「行動・協力」を暗に要請(or義務化)すると取れる条文も存在する。どこの全体主義国家なのだろうか。
  • ネット上でも「知っている」「知らない」の温度差が極端
    • それなりに有名だったりするアニメやイラスト系サイトやブログでも、まったく言及がまったくない所も多い。プロの方でも温度差が激しい(反対を強制するつもりはないけど、例え賛意であろうとも意見は聞きたい。)。今回の一件でネット(特にtwitter等)の即時展開性を改めて知ったんだけど、一般拡散性においてはまだ旧メディアの方が強いな、という印象。旧メディアが、「多くの人に広く知らしめる」受け身のメディアであり、ネット等の新メディアは「アクセスするのは、自らの意志で」という違いも、また鮮明に別れていると思う。

まあ、とりあえずメモ。

*1:ただし日本では。国によって定義は大きく違う。

*2:事実、東京より青少年規制が厳しいところは多い。今度、コミケットSPを行う水戸のある茨城県は、「未成年者に成人向け冊子は売る・見せる・渡す」ような行為をすると、警告なしで逮捕される。

*3:自主規制の「18禁マーク」の有無は全く関係ない。