球場ラヴァーズ

球場ラヴァーズー私が野球に行く理由ー 01 (ヤングキングコミックス)

球場ラヴァーズー私が野球に行く理由ー 01 (ヤングキングコミックス)

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OUR'S本誌の広告でメガホン振りかざしている眼鏡ねーさんの勇姿に一目惚れした上、石田敦子作品だったということで本屋でまとめてゲット。読んでいて、細野不二彦ビールとメガホン」を思い出して仕方がなかった。双方とも、プロ野球を題材としてはいるが、あくまで「プロ野球を取り巻くファン達の人間模様」がテーマで描かれている作品。ビールとメガホンも大好きな作品だったが、その後釜のような作品が10年以上の歳月を越えて石田さんが描いていることに何かの縁を感じざるを得ない。
細野不二彦作品はとにかく人間模様をメインに描ききっていたが、石田さんは得意の「人間の情念(主にマイナス方向)」をメインに描き出している。主役の女性衆三人それぞれの立場でそれぞれの重い悩みを抱えているが、球場という場でそれを吐き出し、球団と選手に希望を託しでっかい声で応援する。しかもそれが広島限定(苦笑)。少しプロ野球を知っていたり、あるいは「はだしのゲン」等を読んでいたら設立当時の広島困窮エピソードを知っている人は多いけど、それはそのまま苦労を重ねる人生模様にもかぶせられるわけで、偶然とはいえよい素材を使ったな〜と思う。まあ、実際には石田さんの趣味100%から始まってるのだろうけど。あと石田さんはエロも躊躇なく描くんだよなあ…よくみれば、フリフリスカートがぶわっとまくれ上がってパンチラなんてシーンは当たり前のように出ているし*1。その延長線なのか、いじめによる肉体の痛みもちゃんと絵にするんだよね。
そういや、巻末だかで「今はプロ野球からの公認がないと選手名とか色々を使えないのが不自由。昔の時代が羨ましい!」なんてコメントがあった。確かにプロ野球のゲームか何かで肖像権がどーだこーだと大もめにもめたニュースが話題になった時代もあったな。そういう目線で「ビールとメガホン」(2000年作品)を見ると、こちらも選手名が全てカタカナ。ただ選手の顔はそのまま描いているパターン(勿論作者による模写だけど)。権利ゴロが五月蠅くなった昨今では、選手の顔を描くこともNGなのかもなあ。
余談だけど、石田敦子についてはアニメの作画で初めて知った。確か「うる星やつら」のアニメで初めて中島敦子さんの作画を見て「うわ、なにこの可愛い作画!」と子供ながらに感動してしばらく過ぎた頃に、ちょっと雰囲気違うけどやっぱりエロ可愛い(当時はそんな言葉ないけど)作画を発見して「中島敦子作画雰囲気変わった?…いや、ちょっと違うか、誰?」で知った方。漫画畑に現れたときはかなり驚いたけど、そのマイナス情念の描き方は色々と自分の心境にシンクロしている部分も多く、漫画家としても大好きな方になった。
さて、なんでも本作は来月からOUR'Sに移転してくるみたいで(石田さんにとっては久しぶりのOUR'S連載)、とても嬉しい限り。今月末には三巻も出るし楽しみだ。

*1:もともと作画が抽象的だからわかりにくいというのも描ける理由なのだろうけども。