児童ポルノ法改正案と人権擁護法案の復活

久々に規制絡みのネタを少し。個人としては(波はあるけど)この手の情報はずっと継続して追いかけているけど、諸事情でなかなかここに書いているヒマがない。twitterで呟いてしまうと、ブログに書き上げる気力が薄れがちだし。

毎度のごとく「民主案」「自民案」の二種類が出てきている。単純所持の問題もいつも通りだが、今回特筆すべきは「民主案には漫画アニメの除外条項が明記されているらしい」こと(条文を確認していないのでニュースソースのみだけど)。いわゆる三号ポルノに該当するか否かの議論の対象の一つだった「架空の創作物」について明確に除外を謳った意味は非常に大きい。ちなみに自民党案は「漫画アニメなどの架空物も”誘発の恐れがある以上”児童ポルノである」*1という従来のスタンスに従った内容となっている。
ではなぜ民主党案に「漫画アニメの除外条項」が付記されたのか。端的に言えば、こういう事だと思う。

都条例をはじめとする各地での表現規制絡みの問題において、漫画・アニメ好きの人たちが「政治家に直接声を届けたから」

ネットでただ文句を言うのではなく、葉書やメールで直接行動したことにより政治家に声が届き、「この手のことに一定の問題意識を持つ人々が確実にいる」ということを理解していただいた=一つの民意クラスターとして認められた」ということなのだ。これは大きな出来事と言える。児ポ法を含む表現規制の戦いの中で明確にこの手の条文が追加されたことは、「極めてまれ」なケースである。
だから、都条例も可決され一種の無力感に苛まれた方も多いだろうが、政治家に絶えず声を届けると言うことは、こういう成果を引き出すことになることも覚えておいて欲しい。表現規制の戦いは”長期戦である”という意味の一端が理解できたかと思う。そして、引き続き声を送って欲しい。あなたの地域選出の国会議員の選挙事務所や党事務所に一言手紙やメールを書くだけでもいい。都条例や県条例における一つ一つの声の積み重ねがこの結果を作り上げたことは、どうか覚えていて欲しい。
なお今回の件について「オタ票を当てにしただけだ」という声もある。それは一つの事実だろう。政治家は「票がないと文字通り生活できない仕事」なのは紛れもない事実だからだ。*2ただ、その場合は別の事実も思い出して欲しい。確かにここ数年オタ票によって考えの近い議員の得票が若干増える傾向にあるが、「オタ票によって当選した議員は皆無」なのだ。また、オタクへの偏見はどうしても拭い切れていないからこそ、攻撃対象にもなりやすい。では、そのリスクを取ってもなおこの条文を入れた理由は何だろうか。それはおそらく「あいまい過ぎる規制条項の存続によって表現規制の戦いに巻き込まれていては、いつまでたっても本来救うべき実在の子供達を救えない」ということではないかと思う。*3

あのとき廃案になったこれが復活してくるとはなあ。今回は「マスコミ規制を除外することで、マスコミによる反対論調を封殺」し、「外国人が人権委員になるハードルをほんの少しだけ上げ」て、「強力な捜査権や罰則規定を亡くした」ことで通そうという目論見である。これならいいじゃないか…と一瞬思うかもしれないが、こういう物は一度土台が出来てしまえば、あとはどうだって改定できることを忘れてはいけない。良い例が東京都が施行した「漫画喫茶の利用には身分証が必要」という条例だ。

「漫画喫茶は犯罪の温床である」という前提を作り(大嘘である*4)、「身分証を提示させる」ことを条例化した。
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本来の次のステップは「この施策により、漫画喫茶由来の犯罪がどの程度減ったのか」を検証すること。条例の効果を見る必要があるからだ。
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しかし、警察が取ったのは「条例を守らない漫画喫茶が多すぎるので、もっと規制を強くしなくてはいけない」という対応。条例本来の目的はどこかへすっ飛び、条例をきっかけにした警察管理体制の確立こそが第一義であったことがあからさまに現れた(ちなみにマスコミもこれを垂れ流すだけなので同罪、あるいは取り込まれている)。

同じ理屈でこの法案も発展できる。いくつか象徴的な事件を仕立て上げ、マスコミを巻き込んで「もっと権限を強化せよ!」という架空の論調を作り上げ、最終的には本来の発案者が目指した着地点に到達するというものだ。*5
だからこそ、その土台を作り上げないためにも、法案そのものを潰すしかないのだ。

*1:この理屈自体がトンデモな内容である。児童ポルノ=「実在児童が虐待の対象になるもの」という定義を逸脱している上、学術的にも証明されていない”犯罪誘発論”を根拠にしていると言うことも問題だ。論拠もなく感情論のみの「かもしれない」だけで規制が出来るのであれば、ありとあらゆることが規制対象に出来るという前例ができあがってしまう。

*2:ゆえに、政治家はPTAや政治集団の意向を反映する傾向にある。

*3:つまり今回の民主案が通ったとしても、その後の展開は注視しなくてはいけない、ということでもある。

*4:犯罪使用率0%ではないが、通常の犯罪発生に比較すれば極めて少ない。

*5:ヨーロッパでは移民増加とその権限拡大により、事実上の民族紛争に近い状態にすらなっているのに、政府やマスコミがそのことをあまり報じないのは何故か。未だに太平洋戦争の悲劇を理由に中国・韓国を必要以上に持ち上げる論調が続くのは何故か。韓流がやたら多いのも一つだ。マスコミやテレビでは大々的に報じているが、実際あなたの身の回りでもそんなに大騒ぎするような現象になっているのか、冷静になってみてみればいい。