青空にとおく酒浸り(5)

青空にとおく酒浸り 5(リュウコミックス)

青空にとおく酒浸り 5(リュウコミックス)

やっぱ安永航一郎はある種の天才だと思う。彼がバリバリに使用している昭和方法論的お下劣ギャグは、今の時代の若手作家では絶対描けないし描こうともしないだろうし、今でも生き残っている昭和からの作家でもこれを描ける体力が残っている人はおそらくいない。赤塚不二夫が「ギャグは時代をしっかり見通し、それを笑いに昇華しなくてはいけないから、トンデモなく疲れる。ゆえに短命なのだ」とも言っていたけど、少なくとも安永航一郎以外の「昭和お下劣&エログロギャグマンガ家」はその言葉通り事実上全滅してしまった。あえて言えば、あさりよしとお当たりが枠に入っているのだろうか。
それだけこの第5巻のインパクトは凄い。昭和の空気を一切否定せず、その緻密な画力と強引すぎる展開を平成の世に叩き付けているこのパワーはもはや奇跡。ずっと商業で鳴かず飛ばず(というか描いてなかった)だったけど、その間も夏冬コミケをはじめとして主要同人誌即売会では、その時その時の旬の作品を彼独自の解釈でエロギャグを常に出し続けたその経験とパワーが、延命も含めて今に生き残った秘訣じゃないかと思う。
…しかしまあ、なんでこの作品が単行本になるのにずいぶん時間がかかったんだろうなあ。もしかして、雑誌掲載時と内容がずいぶん違っているんだろうか。あるいは、「こんなの売れるはずねーじゃん」と思われていたのだろうか。まあ…自分も本屋で単行本を見て初めて存在を知った口だけどさ。