ストライクウィッチーズ劇場版

ストライクウィッチーズ劇場版
最初に言っておく。映画はすげー楽しみだった。第一期前売り券のワッペンや、Kサプライの前売りワッペンをセット買いして悦にはいるくらい楽しみだった。ストライクウィッチーズはこれまでも応援してたし、これからも応援したい気持ちに代わりはない。おそらくまだ何回も見に行くと思うし。これ大事。以上、前置き終了。

  • 全体として

「映画屋はテレビが撮れない。その逆もそう。それは尺の使い方がよく分らないから。だから僕はテレビが難しい」と言ったのは、確か「サマーウォーズ」や「時をかける少女」の細田守監督だったか。それが如実に表れてしまったのがこの映画じゃないかと思う。上映時間はおよそ90分。テレビ本編なら4話分は入る時間だ。色々見せたいのは分る。第2期で完結したはずの宮藤を再び舞台に立たせなくてはいけない生みの苦しさも分る。再集結&解散した501をまた集結させなくてはいけない強烈な理由を映画の中で成立させる必要があるのもわかる。だから、その部分を丁寧に見せざるを得ないのも分る。だが、それが完全に裏目に出てしまったのが本作だった。そしてそれが後々まで足を引っ張ってしまった。

  • 物語として

正直に言おう。前半は非常に退屈だった。新キャラ旧キャラ出てくる度に「おお!」と思う瞬間があったのは事実なんだけど、結局それ以上の内容ではなく「別部隊のキャラ出しました〜。嬉しいでしょ?」か「今の501の面子はこの辺に居るんだよ」という現状報告ばかり。シーンの見せ方もメリハリがあるとは言えなかったし、話の展開につながる物はほとんどなかった。ネウロイとの戦闘も多少の驚きはあったものの、結局どれも同じパターンばかり。ならばネウロイの戦略や戦術を上級司令部や参謀が検討するシーンを出して補完するかと思いきやそのまま終了。見ているだけだと、各地で突発出現した同型ネウロイを個別撃破して終わり。正直、話の中盤から「…これは映画で話を締める気はないんじゃないの?」という危惧を抱きはじめたけど、それが最後の「アレ」で正しいと理解してしまった。公開初日の観客=SWのファンばかりなのに、アレが出た瞬間に客先からわき上がる「…え?なに?…え?」の声。普通ああいうのみたら喜びがまず来るはずなのに、ここまでSWについてきた猛者のファンからの第一声が「戸惑い」。これってどう?
後半…つまり戦闘がメインのシーンはどうだったか。一言で言えば徹底したカタルシス不足。宮藤のピンチに501が結集して無双して終わり。戦争としての描き方やマニアックさは、ぶっちゃけテレビシリーズの方が上。大和を回航しているシーンでカットイン&一言台詞でも「501を援護する!弐番主砲、照準、左舷超大型ネウロイ!砲撃はじめ!」くらい入れてあげても良いと思う。だってさあ、発射された弾頭が一瞬見えたけど、あのカラーリングはちゃんと九一式徹甲弾になってたわけだし、「扶桑の海軍はどうかしている」の台詞の補完にもなってたと思うんだよな。あと、せっかくの陸上戦だというのに戦車が出たのは最初だけ(米独戦車そろい踏みは興奮したよ!)。でも「戦車が出るらしい」という話を聞いてから超楽しみにしていた陸戦ウィッチは影も形もなし*1。最後のチャンスと思ってたから、もう映像で陸戦ウィッチを出すつもりは微塵もないんだな、と強く思った。航空戦力だけでこの戦いは集結することが確定なのだろう。そしてやっぱり、基本的に戦争は描きたくないんだなーとも。ただ、主要キャラに「出血させた」のは初めてかもしれない。

  • 現実とのリンク

本作はドイツ最後の反撃と言われた「バルジの戦い」「アルデンヌの戦い」に当る。出てくる町の名前からもそうだし、何より「バストーニュに米軍第101空挺師団を向かわせろ」の台詞で確定。史実では、一時かなり独軍は良いところもまでいったけど、燃料&弾薬不足で次々動きが止まって失敗。バストーニュでは第101空挺師団が完全孤立に陥ったものの独軍の超猛攻を耐え忍び*2独軍進撃最大の障害になりつづけた。そこにパットン率いる第三軍麾下の戦車隊がクリスマスの翌日に突入して解放に至ったという第二次世界大戦欧州戦線の最後のクライマックスとも言える戦い。戦車&陸戦ウィッチが見れるとしたらここが最後のチャンスだけど…。それに、今のネウロイは当時の独軍より全然余裕だと思うしなあ(苦笑)。なお、映画を見る限りはバルジの戦いの緒戦で止まっている雰囲気があるので、その続きがまたどこかで描かれるのだろう。それが最後のアレだろうし。
そういや、はっきり確認できなかったけどエイラのタロットカードのデザインが変更されていた気がする。昔、野上さんがMCあくしずでデザインして、第一期の特典についていたあれではなかったんではないかと。もう一度見に行くときに確認するけど、もしそうだとしたら占い的には大変な間違いを犯している。タロットというのはとっかえひっかえ使う物ではなく、一つのものをずっと大事に使い続けるもの。そうすることによって占いの力も上がるもの…そういうものだからだ。まあ勿論破損・汚損したりしたら交換するしかないのだけど…あれだけ占いを大事にしていて、敵弾に当らないエイラにそうそうそんなことがあるとも思えない。むう…。

  • 総括

ということで。映画化されたのは非常に目出度い限りだけど、その期待分を満足させてくれる内容ではなかった…残念、というお話。キャラメインで「また会えた!キャッキャウフフしてるよ!ズボンも大画面だ!」だけなら200点満点なんだが(おい)。まだ何回も見に行く予定なので、そこで少しずつ印象が変わる可能性はあるけど。

*1:これは個人的願望もでかいけどw

*2:ここでの独軍からの降伏勧告への返答が「NUTS!」(くそったれ!のような意味)は有名。