ムカデ人間2 (たぶんネタバレあり)

映画「ムカデ人間2」オフィシャルサイト
恐怖映画と狂気映画の違いは何だろう。本作は恐怖<狂気であると思うが、一番の正解は「吐気映画」なのかもしれない。第一作が「ファミリームービー」に見えるという宣伝文句、マジで偽りなし。私自信、まじで今そう思っているもの。それだけ「生理的に来る」映像がてんこ盛り。そちらへの耐性に自信がないのなら、絶対に見る”べきではない”。個人的なジャンル分けなら「ホラー/恐怖」でも「マッド/狂気」でもなく、「スナッフドキュメンタリームービー」と言っても正直ウソではないと思う。もう一つの側面があるとすれば「監督自身によるセルフ同人映画」かな。前作の内容をそのままメタ構造に持って行って「実は映画でした」としているのは、発想自体がすごい。
主人公はほとんどしゃべらないのだが、その行動や表情だけで凄まじい存在感を誇っている。まさに怪演。この方、長編映画は初登場だが、こちらの業界ではベテランらしい。前作もそうだったけど、よくもまあこんな役者を見つけてくるよな〜というのは素直に思う。「ただそこにいる」だけで、ここまでヤバイ雰囲気を出せるのは凄すぎる。
主人公の生い立ちや境遇については、暗示的ではあるが描かれている。おおむね、「幼少の心理的外傷により精神障害がある前作の熱狂的なファン」という立ち位置だ。んで、それを下地にして「ムカデ人間」への狂気と嘔吐の世界にご招待されるわけだが…これがまたとんでもない内容。前作の内容に「物足りない」という声があったそうだが、その声に逆切れしてその勢いそのままで作り上げた、と思っても間違いには感じない(実際には、監督はこういうものが撮りたかったそうだが)。この手のものには十分耐性があると思っていたのだが、凄惨すぎるシーンの一部ではちょっとスクリーンから目をそらしてしまった。*1
ただ見ていて「これは映画なのかなあ…」と思ったのも事実。ストーリー性がかなり低いからだ。ただひたすらに気分を悪くするために作ったマッドカルトムービーとして考えれば、物語性は刺身のつま程度になるのも仕方がない。なので、後半似たような展開が連続して描かれて、正直あくびが出たのも致し方ない(これ、周りの人もそうだった)。4コマ漫画的展開が原因で笑ってしまったこともあったけどね。
前作で「なんだよ、この程度か」と思ったのなら見る価値はある。逆に前作の「冷静な狂気と妙に美しい映像」が気に入った人にとってはトラウマ級の内容。興味本位だけで前情報ゼロで見に行くとかなりの確率で「気分が悪くなる」ので(分っていてもキツイ)、事前によく調べてから見に行った方が良い。
ところであのラストは「夢オチ」ということなんかなあ。

*1:同じような内容の二次元イラストだと何ともないのにね…改めてリアルと架空の差というものを見せつけられた気がする。