(帰ってきた)非実在少女のるてちゃん

舞台劇は「生き物」であると思い知った。「再演」と聞くと、オタク的には「再放送」と変換されて「同じ事やるんでしょ?前に見たよ」と思いがちだったが、人間が生で演じる舞台劇。2年間という時間は伊達ではなかった。前回との相違点より同一箇所を見つける方が大変だw
笑の内閣
第16次笑の内閣 『非実在少女のるてちゃん』
非実在少女のるてちゃん - Wikipedia
twitterを見たらまた東京で公演があることを知る。ついでにHPやブログを見ると「この劇は役者の代替が効きにくい劇だから、次が出来るか分らない。おそらく次はない」等のことも書いてあった。表現規制反対の立場として、かつて池袋で見させていただき大笑いした人間の一人として見に行かないと駄目だろう、と見に行ってみた。
こまばアゴラ劇場」は今回初めて知ったのだが、演劇界隈では恐ろしく有名なところで、ここで演じることが一つのステータスらしい*1。というか、この劇場の主催者「平田オリザ」の名前はニュースや雑学で聞いたことあるぞ!てことはやっぱ凄いことなのか!で、すげえ立派な建物を期待したらそうでもなかった(苦笑)。でも考えてみたら小劇場ってどこもこんな感じだもんな。
さて、話の大きな流れは2年前と変わらない。ただその2年の間に発生した表現規制絡みの様々な事件や発言、アニメや漫画のトレンドをがっつりと吸収しており、演出はまるで別物。各種オタ系のネタも遙かに情報量が増えて、パワーアップしまくっていた。顕著なところでは「魔法少女」として一世を風靡した「まどか★マギカ」をあちこちに吸収していたり、漫画や生ものBLネタがえらく細かくなっていたり(おい)。まあ…妖精は前回の「巨漢デブ上半身全裸」の方がインパクトあったけど。あと、藤吉弥生役の鈴木ちひろさんが、すげー可愛かった。俺妹の黒猫がリアルでいたらこんな感じなんかねー、ってくらいに。とにかく笑った。

あれから2年経過しての宮台先生の台詞は色々重いし楽しかった。結局、この演劇は「表現規制」のみならず、今日本にまん延している「寛容精神の消滅」「それに伴う価値観の違う他者への拒絶」こそがテーマではないのか、ということだった。男女の性についての言葉も面白い。

昔の日本の夜這いについて乱交SEXと海外で紹介されているけど全然違う。あれは村共同体における管理の一つ。年齢別若衆が、夜這いしても良い女性と共にムラ共同体で管理して実施していたらしい。つまり、「Aランクの女性にはAランクの男性を、CにはCを」といった感じ。そうやって共同体社会の中で「管理」される形で皆が性を経験した。
今は「自由」ゆえに「誰でも出来る」…と思ったら大間違い。男性のA〜Cランクは皆性に興味がある。しかし、女性のA〜Cランクは「Aランクの男性以外興味がない」。結果、Aランクの男性は一瞬で市場から払底する。しかし「女性自身は自らのランクに関係なくAしか求めない」から、市場のアンマッチが当り前になる。男性のBCに性経験なしが増えるのは当り前。
「だからお見合い産業は濡れ手に粟だよ。だって絶対に組み合わない人(Aしか求めない女性、BCしかいない男性)でお見合いするんだもの。いつまでも決まらないから、お見合い会社にお金はガンガン入ってくる」
「最近はそう言う状況に気がついた女性も増えてきて「なら壱から育てるしかない」として「童貞市場がドンドン高くなっている」状況もある。童貞の市場価値は、今ドンドン上がって居るんだよ(笑)」
「楽屋で聞いているウチの劇団員も勇気をもらったと思います」(笑)

表現規制に留まらず、日本の性表現と許容・寛容精神のありようについて、想像以上に面白く含蓄のある言葉を聞くことが出来た。楽しい一日だった。

*1:なんでも劇場から打診がないと駄目らしい