敵は海賊・海賊の敵

敵は海賊・海賊の敵 (ハヤカワ文庫JA)

敵は海賊・海賊の敵 (ハヤカワ文庫JA)

神林長平は大好きな作家だけど、発売日にあちこち走り回ってようやく手に入れた「敵は海賊」最新作をようやく今読めた、という事実から、「神林長平を読むには、精神的に余裕がないと駄目だ」ということを改めて認識した。疲れていると神林特有の言語と認識の話がなかなか頭に入ってこないんだよなあ。
今回の感想はとにかく「また海賊版を読もう」と思うに尽きる。実は全体を読み終わった印象が、敵は海賊シリーズにしては思ったより小品に仕上がってるというもの。少なくとも読んでいるうちに広がっていった脳内の視野を越える前に、話に幕が引かれてしまったと思った。失礼を承知で書いてしまうと、「気がついたら、匋冥と一人と一匹と一艦が勝手に暴れ出したので、やむなく出力して出版した」作品じゃないだろうか。もちろん、最近真面目な作品ばかり書いているから息抜きに使ったという可能性もあるけど、敵は海賊って神林にとっては「共通の舞台を使った実験場」と思うので、どうしても毎回の仕掛けとか言語認識合戦に期待してしまう。なので、ちょっと拍子抜けした。まあシャルファフィンが出てきたり女王の話が出てきたりと、「海賊版」設定が今ぼりぼり再浮上した意味は聞いてみたいけど。
でもまあ、久々にリリースされてしまったから、次の「敵は海賊」は何年後かなあ…。幕を引くそぶりもないから続くは続くのだろうけど、あまりに長いと決着が付く前に作者の筆が止まってしまう。