劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』

劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』公式サイト
!ネタバレあるかも!
アニメ版アイドルマスター劇場版の話が出た時から鑑賞する予定だったけど、なぜか前売りも買わないで事前情報も意図せず仕入れないままだった。まあ「合宿してライブ」という筋書き、「グリマスの面子が出てくる」および昨年の横浜公演で観客ごと音取したと聞いたので、そんなもんだろうな、と。なので、劇場の座席予約の際に初めて120分超の作品であることを知った。
そんな状態で見た劇場版だが、一言で言えば「アニマス製作陣、本当にお疲れ様&ありがとう」。元気をくれる作品に仕上がったと思う。
アニマスが投入された当時、アイマス2騒動で心身ともに疲弊したころでアニマス自体もかなり斜めに見ていた。しかし初期こそ「本当にコレ大丈夫なのか?」と品質含めて猜疑心に囚われていたけど、中盤以降は映像、脚本共に素晴らしいとしか言えなかった(木製を含めて)。なによりアイマス2で(半ば制作側の意図的とも言える)ファンコミュニティの分断と対立を目にした後の「無印から最新作までの全部を、ファンの視線で丁寧に拾った展開」は、「アニマスの中の人、よっくわかってるやん!これこそアイマスのAll for oneだよ!なんでゲームではこれができなかったんや!」と何度思ったことか。そんなスタッフが再結集して、アニマスのその後を描くというのだから、ほとんど心配はしていなかった。そしてやはり心配する必要はまったくなかった。「ああ、彼女らも大きく成長したなあ」と感慨に浸ると同時に、「ああ、アニマスはこれで一幕の終了なのだな」と寂しい実感も湧いてくる。

  • グリマスの必要性、あるいは「成長物語の終演」

見た後に調べてみると、ファンの間ではグリマス勢の参加が不安要素だったらしい。しかし、劇を見た限りむしろこれは必然だ。アイドルマスターというゲームは本来「弱小プロ&アイドルがトップを目指す」というのが大看板だ。だが、アニマスラストにおいて彼女らはほぼトップに近い位置に立ってしまっている。自前のスクールを持てるくらい、プロダクションも大きくなってしまっている。すでに完成された「765プロ」という空間単体では「劇場版に耐えうるドラマ」を描くのは残念ながら難しいのだ。勿論、アイドルとして登るその先もあるわけだが、それは「Top of Top」の世界であり、本来この作品が見せるべき「成長物語」ではなくなってしまう。だからアニマスの後日談をそのまま描いても「765プロのみんながキャッキャウフフしながらアリーナの準備をして、演技するだけのアニメ」にしかならない。ファンはそれでもいいのだろうけど、劇場作品単体としてはあまりに意義がなく、無味閑散。それこそOVAのおまけで十分な内容だ。なによりそんな萌えのみを消化するだけの方法論では「アイマスの未来が止まってしまう」。
だから、彼女らを客観視できるキャラが「狂言回し」として必要になる。かつて765プロの皆がいた場所から、今の彼女らを見る役割だ。同時にそれはファン自体の視線でもある。この対比は765プロ全体の過去への振り返りとなり、対比となり、成長物語の「エンディング」を飾るものになる。そしてそれはドラマになる。じゃあ、誰が狂言回しをするのか…で、グリマス勢の登場。もともとグリマスはアニメベースの舞台設定だ。それは小鳥さんが案内役になっていることからも明らか。残念ながらモバマスは明らかに「平行世界」のアイドルマスターであり、話と無関係の見せ方(劇中広告とか)でもしない限りはアニマスに入る余地はない。モバマスファンには憤懣やるかたないところもあろうけど、ここまで話に絡んでくる以上はやはりグリマス勢の投入という選択肢しかない。それになにより、彼女らの投入で作品の山谷が出来たのも間違いがない。

  • アニメの演出、脇役出演、その他色々

ずっと見ていて「おや」と思うところがいくつか。ひとつは春香と矢吹可奈の二人でお菓子をこぼして拾うシーン。ここ、明らかに「惡の華」で有名になったロトスコープが使われていた。おそらく後にも先にもここだけだ。それ以外でもモーションキャプチャーベースと思われる動きがあったんだが、なぜここだけロトスコープだったのだろうか。確かに面白い動きだったけど。
個人的に裏方さんは大好きなので、レッスンの先生たちや取材陣、876プロの記事やポスターなどで脇役勢が色々出ていたのは、出てくるたびにワクワクしていた。彼らも765プロを支えた大事な柱なのだから。あと876が声なしでもいいから動いて邂逅するシーンは欲しかったかなあ。あ、ただ千早の母ちゃんが来た映像がなかった気がするので、それだけは心残りか。
あと可奈を探して合流する橋のシーン。あの場所、どうにも見覚えがあるような気がしてならない。例えば東急東横線新丸子〜多摩川間の多摩川沿い。土手から左右ともに鉄道橋が見えて、橋の突き当りがああいう感じの道路。うーむ。記憶違いだろうか。

アニメ版アイドルマスターはおそらくこれで終了と思う。映画ラストで赤羽根Pも戻ってきたのを描いて未来の物語もしっかり閉じていることからも明らかだ。その理由は前述のとおり「アイドルへの成長物語」が一旦終わってしまうから。アイドルマスターという作品をまだ続けるとなると選択肢は2つ。ひとつはこの時間軸をまだまだ続ける。もう一つはリセットする。そして制作側は後者のリセットを(ある意味予告通り)選んだ。もし前者を選べば既存ファンは嬉しいのかもしれないが、同時にアイマスそのものを閉じた世界にしてしまい、あとはただ素材を消化して商品の寿命を待つだけとなってしまう。
なので、おそらくこれをもって「2nd DIVISION」は終了なのだろう。3rdの開幕門は、おそらく5月発売の「One for All」が務めることになる。

  • まとめ

実はアイマス本編に触れるのはこの映画が久しぶり(モバイルはやってるけど)。今はずいぶん冷静になれたとはいえ、色々あってアイマス2には一切手を出していないのもその理由の一つだろう。しかし劇場版を見て改めて「やっぱアイドルマスターという作品が大好きなんだなあ」と強く思う。映画自体、今現在の自分の境遇とリーダーとしての春香の悩み、あるいは赤羽根Pや律子と同じような立ち位置がかぶるところがあって、ずいぶん元気づけられた。多分、後数回は見に行くと思う…上映時間の長さがネックではあるけど、できれば会社帰りにフラッと劇場に寄って元気をもらって帰宅するような感じだといいなあ。…そして「One for All」は律っちゃん含む竜宮勢が復帰とのことでPS3ごと買う予定でいる。