氷菓

TVアニメ「氷菓」オフィシャルサイト
過去作消化。京アニは背景を動かさないと死ぬ呪いでもかかっているのだろうか。
原作未読。アニメ的な絵画表現についてはもはや文句のつけようがない。もともと動作の少ない作品だったからか、主要キャラの細かな動きを執拗なまでに描写するだけに飽きたらず、背景モブまで常に動いている状況まで作り上げ、さらに背景美術が渾身の内容を見せている以上、ほかになにかいうことがあるのだろうか。素直に物語を見ていればよかったのに、気になる動きがあるたびに「一時停止→巻き戻し→コマ送り」を繰り返したアニメは久々だと思う。
ただ、それを表現すべき原作として「〈古典部〉シリーズ」というのは正解だったのか、最後まで見てもずっと疑問だ。最初は「誰も死なない推理モノ」と思っていた。しかし物語を見ていくうちに、その推理モノというテーマ自体もあくまで付随的なものであり、とにかく主題は主人公4人組の心の琴線描写だったことに気がつく。しかしCMで言っていたような「ほろ苦い青春群像劇」というほどの内容だったのかはやはり疑問だ。第三者、つまり視聴者にその視点を預けるのはよくある話だが、このアニメではその預け具合が普通ではない。おそらくキャラクターを撮影しているカメラ的立ち位置自体にもそれを渡さず、ほぼすべての視点と解釈を視聴者に丸投げしている。丸投げしているから、映像の中では恐ろしいほど淡々と物語だけが進むだけだ。酷いのは、丸投げしているのに視聴者が見たい瞬間や絵のシーン、そこにカメラを置かなかったこと。しかし前述の前提に立てば誰もそのことに対して評価も文句も言わないのだから、演出的見せ方が優先したとしても当たり前のことだ。
だからなのか、文化祭イベントが終わった後の残りの話数は短篇集の消化のような状態となってしまった。確かあの段階で残り4−5回。ラストエピソードにふさわしい大きな仕掛けをやろうと思うなら十分すぎる回数だ。しかし、それは採用されなかった。せめてものお詫びなのか、最終回に桜の下で折木がつぶやいた…と思わせたあのセリフ。あれが視聴者の大半があの場で聞きたかったセリフだったが、それをあそこで出したのだと思う。(原作ではどうかはわからないけど)
ざっと調べた限りでは、原作はまだ続いているらしい。もしかするとまたある程度たまったら続きをやるのかもしれない(BD/DVDの売れ行き次第だろうけど…どうだったんだろうか)。