機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

今季終了第4弾。おおむね予想通り。
長井龍雪岡田麿里の組み合わせでガンダムを作ったらどうなるか…答えは、二人の作家性は全くぶれていなかった。ヤクザガンダムなんて揶揄もされていたけども(いや、実際その通りなんだけど)、基本的にこの二人は「ある程度の奇跡」は見せてはくれるけど、視聴者の胸のすくような展開はしてくれない。例えば、今回もやろうと思えばギャラルホルンラスタルの崩壊、起死回生のオルガたちの勝利という筋書きも無理やりやればできたろう。だけど、逆にそれは一切排した。それこそ、昭和武闘ヤクザ映画そのものに、最後はヒーローたる主人公もみな死んでいく。せいぜい、一つ大きな望みを叶うかかなえられるか…それくらいの手土産だ。それがずっと見ていてわかるので、この物語の終着点としてはこれが正しい。悲しいけどね。そのうえであえて予想と反していたとすれば、アイナ・バーンスタインの生存かなあ。絶対どこかで死ぬと思ってた。
ロボ物としてのガンダムとしてみれば、これは失敗作だろう。あくまで人のドラマの添え物にしかなっていない。だけどこの二人にそれを任せた時点でそこはサンライズもわかっていたろうと思う。そこにあえて成功点を語るなら、「ビーム兵器のない世界」をガンダムとしては珍しく成立させたことと考える。
戦場はあくまで実態弾・剣、ないしは鈍器がすべて。個人的にはこれがとても面白かったし、作劇としても「あっさり即死しない」という大きな理由付けになっていた。過去のガンダムなら、ビームの熱で瞬時に蒸発する代わりに、幽霊を出して意思を伝えるという一種「オカルト」が前提だったけど、この作品なら「死ぬまでの時間」が当たり前のようにあるので、幽霊を出す必要がない。また、作品的にも「幽霊を出す」というのは著しく雰囲気を損ねるわけで、変な意味での「原点回帰」になったのかもしれない。冨野監督も「ニュータイプの幽霊はオカルト」と苦笑いを呈していたわけで(自分でやっていたことだけど)、ある意味「当たり前のことでその答えの一つを出した」と言えるかもしれない。
ともあれ、自分の中では近年のガンダム作品の中ではお気に入りになった。…まあ、気に入った理由が過去のガンダム作品とはまったく雰囲気が違うので「ガンダム作品では」というくくりで考えるのは何か違う気もするけども。