GODZILLA 怪獣惑星

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果たしてこの映画は「面白い」と言えるのだろうか。
ゴジラに限らず「特撮」はそれ自体が天井知らずのパワーゲームに対する一つの制約になっている。特殊撮影という架空の存在に対して生身の人間を出すことで「勝てるか、勝てないか」というパワーバランスをギリギリのところで取る。それによって、観客にも親近感と一体感を感じさせて映画に没入させる。だから登場人物の恐怖は、そこにいたかもしれない観客自身の恐怖にも通じる。シン・ゴジラはまさに「リアルな身近にゴジラが現れた」特撮映画と言えた。
しかしアニメは違う。敵も味方もすべて架空であり、最初から荒唐無稽なものを出せる。それこそ、惑星・太陽系・銀河系サイズのゴジラだって出せる。そしてそれゆえに観客は完全な第三者視点で映像を見る。別の言い方をすれば、映像と自分自身を完全に別物としてみる。
してみると、このアニメゴジラはそのバランスをどうとるのかが一番難しかったと思う。あまりにパワーバランスが崩れたゴジラを見ても、逆に弱すぎて人間大勝利のゴジラを見ても、観客は喜ぶはずがない。虚淵脚本なのでめでたいラストにはなりえないことは大方予想通りではあったが、それをどう見せ、観客にアピールすればいいのかということになる。「シドニアの騎士」のスタジオが作っただけあって、SF的なガジェットは十分に楽しめた。しかし正直それだけだ。とある理由で手に入れているオーバーテクノロジーを利用した戦いは、大げさに見えて実はかなりこじんまりとした局地戦でしかない。まあその理由も映画では語られてはいるが…。
では楽しい映画だったのか、と言われると正直かなり微妙と言わざるを得ない。なんせ、徹頭徹尾「絶望」しか描いてないからだ。まあそれも一つの手法ではある。個人的にも嫌いではない…が、映画一本見て何かの満足感が得られという感覚もなかった。ただ単に「あれ、終わったか」と淡々と感じただけだった。
アニメとして見せるためにカスタマイズしたゴジラを出した、というのはまあ正しい。ただ、アニメという媒体を選んだのがゴジラ作品として正しかったのかというと、個人的には疑問符が残る。三部作まとめて作って連続公開した方がよかったんじゃないかな。