閃光のナイトレイド

閃光のナイトレイド

閃光のナイトレイド 2 [Blu-ray]

閃光のナイトレイド 2 [Blu-ray]

今期終了第5弾。スタッフの頑張りは認めたい。
「よくもまあこの時代を題材にしたな」と色々な意味で感心していた本作。実際、当時の風俗や地図を虚実合わせてよく調べていたし、積極的に外国語を使っていくという点でもやる気があちこちに見て取られた。何より、「日本」という国にとっては非常にデリケートな時代であり、実際こういう物語はアニメーションという題材では滅多に取り上げられるテーマじゃないものを題材にしたのは拍手するべき。おそらく、スタッフもそのことを理解した上で「爆弾を踏むなら笑われないように」の気持ちで作り上げていったのだろう。すでにネット上では駄作として語られているようだけど、完全オリジナル作品としてここまで作り上げたその気合と心意気は認めてあげるべき。
ただ、一気に全話を通しで見た感じとしては、そんなに悪く言うほどの内容だろうか。おそらく、あの「うやむやのまま終わってしまった最終回」に対して不満爆発というのが大きな要因であろうとは思うけど。今時のアニメに慣れてしまっていれば、ああいう終わり方にはそういう感想が出ても仕方がないだろう。でも、昔からオタをやってみる身とすれば、以前よりこの手の「暗い世界背景物」はこういうエンディングが多かった。そりゃ、もちろん「その後どうなったんだ?」という気持ちはあるけど…そこは視聴者にゆだねられたと言うべきか。
勿論疑問に思う点も多い。個人的には総集編的意味合いを持った特別編「預言」の回あたりで、それまでのスパイ作品からガラッと空気が変わってしまった感じが強く残念だった*1。そこまでの空気がちょっとまえのスパイアニメ風で気に入っていたのでその点は少し肩すかしを食らったのは否定しない。その後、一気に風呂敷がでかくなりすぎて戸惑う…というかいきなり世界情勢を語り始めたのには「困った」という印象が強い。桜井機関のトップの顛末は「サプライズ」なのだろうけど、地味すぎてピンと来ない部分もあった。後半で語られる話も世界史と日本史をちゃんと学校で学んだ人ならば「ああ、あのことね」と認識できるテーマであって、サプライズという程のことではない。歴史の座学を復習している気分にもなったかもしれない。
ただそれだとしても、無理にスタッフと作品は叩きたくはない。脚本的に言えば、この時代に対するスタッフの想いはどこかで見せて欲しかったのは確かにある。ただ、それを口にするには極めて難しい時代背景だ。今の日本における「潔癖ともいえる両極端な思想の浸透」によるテレビ局的な配慮もあったろう。そう考えると、やむを得ない選択肢だったと思う。あるいは、そういう時代を「アニメキャラクターの目を通して」視聴者に追体験させたかったのかもしれない。あの後、間違いなく皆が歴史で学んだ時代に突入する。それでも、人はしぶとく生き抜くことになる。
願わくば、本作をテーマに改めて「小説」の形で読んでみたい。それもこの時代に詳しい著者によるA-1 Picturesとの共著の形で。映像媒体では駄目でも、文字媒体なら許されることも多いだろうし。少なくとも、特殊能力を持つ彼等を軍部が早々ほおっておくとも思えないし。そして願わくば、雪菜だけでも戦争を生き残って「エピローグ」的な一節を付け加えてくれると嬉しい。
あと一つだけ。OPとEDはけっこうお気に入りだ。
(追記)
未放送を有料チャンネルで視聴。…そりゃ、地上波じゃ無理だ(苦笑)。エンターテインメント的には「主要キャラがひとりも出ていない」し、政治的にも「そうそう地上波で放送できるものでもない」ネタだ。ただ、ここをどうしても書きたかったんだろうな。じゃなきゃ、こんな気合を入れて作ったりはしない。むう…やりたいことは見えていたけど、アプローチの仕方がだんだん分からなくなって、後半がああいう話になってしまったという可能性も見えてきたなあ。

*1:Web公開のみという第7話は未見。HPを見る限りでは地上波では公開がまずいテーマだったのかもしれない。