はやぶさ/HAYABUSA

映画『はやぶさ/HAYABUSA』はやぶさ2打ち上げ記念!2014.11.21ブルーレイ&DVDリリース
20世紀FOX東映、松竹と三社から相次いで公開される「はやぶさ」映画、その一本目たる20世紀FOX版。ドキュメンタリー映画の色彩が強いかな…その分、ずっとはやぶさのみならず日本の航空宇宙史に興味を持っていた人にとってはなかなか良い出来だったと思う。不満はあるけど、その不満の中身は「あのエピソードが入るなら、このエピソードも入れて欲しかった!」という類の物で、作品そのものへの不満はほとんどなかった。むしろ2時間20分という枠でJAXAはやぶさに関わる「歴史」を丁寧に見せてくれたことが嬉しかった。そう、何もはやぶさだけが日本の宇宙開発の歴史ではないわけで、他の衛星や関わった科学者達の多くの努力と経験の積み重ねそのものがドラマである…この点に気がつき、それにしっかり焦点を合わせて作り上げたというのが一番のポイントと思う。結果、この映画は「日本の宇宙科学に対する啓蒙映画」の側面も色濃い。役者さんも実在・現役の人々を可能な限りトレースして演技しているのがよく分かる。実際にはやぶさJAXAを見てきたファンが見ても「おお、似てるw」と思える。
映像の多くを宇宙研究所の相模原キャンパスで撮影しているのも良かった。はやぶさカプセル公開の時に初めて訪れてあちこち見て回ったけど、まさにそれと同じ場所が何度も映像に出ていて嬉しいのなんの。「おお、ここ入ったよ!これ見た!」というのも多くてワクワクした。研究室内での科学者達の議論シーンなぞ、映画終了後におそらく研究生であろう人たちが「いやあ、あのシーン内の研究室と雰囲気まるで同じだよ。ちょっとどきっとしたよ」と言っていたから、迫真に迫っていたんだろうな。下手に人情物にシフトすることなく作り上げた成果はキッチリ出ている。
しかし、三連作のトップがここまで良いネタを先に使ってしまった(勿論未消化のネタも多いけど)。残り二作のハードルはどんどん上がってくる。三作品とも科学的正確性はきっちりやるらしいけど、本作が指標になる以上生半可な作りでは評価は難しいし、安易なお涙ちょうだい人情物語に作り替えるとさらに駄作のレッテルを貼られてしまうこと請け合い。「感動は客の物であって、それを作品側がムリヤリ提示する必要はない」のだし。
まあ、どうしても自分自身の想い出補正が強烈なので、余程の駄作でない限りは褒めてしまうんだけどね、このテーマだと。逆にそれでも叩いてしまう場合は、よっぽど酷い物と思ってくれれば。