心が叫びたがってるんだ。

映画『心が叫びたがってるんだ。』
もう嫌味なくらいな青春映画。「ああ、こういう青春送りたかったなあ」とか「畜生!うらやましいいいい!!!!」とか心のなかで何度叫んだことか。2時間弱という時間なので、「あの花」のような「無理にでも泣かせてやるぜ」という強引な展開を改めて使ってくるのかなと思ったけど、意外とその辺りは王道を貫き通した気がする。そして「個人としてはラストああなって欲しいけど、この流れならああいうラストなんだろうなあ」という想定したとおりになった。テレビシリーズだったら「ええっ!?」というかもしれなけど、短編映画で見せることが可能な枠組みで考えると案外妥当と思う。あえて不満らしきものを言えば、果たして「卵」のファンタジーが必要だったかどうか、かな。例の神社が実在していてまさにそういうことをやっているなら物語ソースとしての意味があるけど、そうでないならば無理にファンタジーを持ってこなくても十分成立していたようにも思う。まあその分導入が大変になるから2時間弱に収めるのは大変になったろうけども。背景に武甲山っぽいものがあったり西武鉄道が見えたりと、あからさまではないにせよ秩父地方が舞台になっているのも分かる。背景もはっきり描いていたから、あの花と合わせて聖地巡礼客がまたしばらく増えそうだなあ。
個人的に見ていてニヤニヤが止まらなかったのは、坂上が「1+1=1」の部分に気がついた所。あそこ、ピアノをいじり始めた瞬間に「あ、ああいう音合わせしたら面白いと思うなあ」と気がついた瞬間に彼が全く同じ結論に持ってきたから、なんかもう凄い嬉しくて。しかも、こういう音楽の重ね方は個人的にも大好きな手法だし。このことに気がついたのが制作陣の誰かはわからないけど、その人には盛大な拍手を送りたい。
…それにしても、劇中のキャラクターたちが羨ましいのなんの。自分はこの時代をとうの昔に通過してしまったけど、そんな自分ですら本気でそう思ってしまったほどだ。羨ましいといえば、ちょうど自分が座っていた数列後ろに10代なかば〜20代前半と思わしき男の子集団がいたんだけど、上映終了直後に「なんだよこれ!超イラつく!」と突然不満を口に。おいおい、穏やかじゃねえなと思ったら次に出たのが「俺も共学にすればよかった!なんで男子校とか選んだんだよ、俺!」というセリフ。すっかり映画に当てられて自分らに不満が出来てしまったのね(苦笑)。いやいや、そういう思いも十分青春だと思うぞ。