東京都青少年健全育成条例改正案



石原都知事が、かなりの暴論を議会でぶち挙げたらしい。まあ暴論とは言っても規制派にとっては福音のようなものだったのかもしれないけど。いくら東京都とはいえ憲法規定を逸脱する方針を積極的に進めることになんら躊躇がないというのは、もはや権力の暴走では。「児童ポルノ」というレッテルと「青少年の健全育成」という錦の御旗で、どこまで拡大解釈するつもりなのだろうか、というレベルだ。
また、規制派に対して具体的に効果数値を要求しても何も出てこない。規制が厳しいはずの欧米での犯罪率が遙かに高い理由の回答もない。あるのは、「欧米が」「犯罪が(1件"も")あったから」という針小棒大な理屈だけ。だけど、レッテル貼りが強烈なので反論の声が上げにくいという仕掛けでもある*1。そのためか、この法案を施行することで青少年の健全育成にどのような効果が期待されるのかは言及されていない。
そもそも、今回の改正案は成人向け図書以外にも、携帯やネットの事実上の強制フィルタリング、本来親がやるべき行為を都知事の指示で代行できること、これら施行状況を管理監督するための天下り組織の設立と、大変適用範囲が広い。「二次元ロリ乙」なんて笑っていられるレベルではもはやない。「青少年」と謳っているものの実態は全都民が適用対象なのだし、これを足がかりにすれば「倫理」「心情」「信教」についてもいくらでも法的論拠を作ることが出来る。
業界関係団体への「努力義務」だから何も変わらない、という声もあるようだけど「努力義務=自主規制」であり、日本の業界団体の自主規制が「事実上、完全禁止」に近い状態になるのは良くあること。ニッパンとトーハンが流通を止めれば事実上発禁、なんてのは有名な話だ*2。さらに流通や情報の中心である東京において実施されることは、そのまま全国にも同じ状況が波及することでもある。もっと言えば、数年後「努力義務でも駄目だったので、罰則をつける」というのは非常に分かりやすいルートである。
ただ、規制反対派側にも問題があって、所謂関連業界団体の動きが極めて鈍い。流通・出版・アニメから始まり、今回やり玉の一つに上がっている同人業界もそうだ。同人業界については、「同人が好きで集まっただけで、心情は一枚板ではない。むしろ色々いる。だから、代表としては動きにくい」という意見もあるようだが、その同人業界が狙い打ち(というかスケープゴート&釣り餌)にされているのだから、是非とも声を上げて欲しいのだが。最大手であるはずのコミケ準備会は一切声明出していないし、その他有力な即売会のHPやblogを見ても、まるで何も知らないかのような反応ばかり…。なんだかなあ。

*1:この辺りは、先日行われた『冷静な「児童ポルノ禁止法の改正論議」を求める院内集会』で話題になっていた。

*2:だから、海外から叩かれているらしい。