アイマスと「昭和アイドル」

アイマスは昭和アイドルだと思う。
今でこそ、アイドルは私生活や恋愛ですら切り売りして商売し、少しでもファンに身近に感じて欲しいためのプロモーションを仕掛ける。しかし、昭和アイドルは全く逆で、私生活は一切見せないし、恋愛なんぞ気配すらNG。それ故に「XXXはトイレに行かない」なんて都市伝説まで生まれてしまう始末。「いい年なんだから、彼・彼女がいたって不思議じゃない」なんてのは、まさに今の時代だからこそ出る言葉で、当時はそんな気配が出た瞬間にアイドル終了だった。まさに、ファンにとっては「見ることは出来るけど触れない偶像(アイドル)」だった。
所謂オタ芸もそうだ。昭和アイドルでは「親衛隊」と称して、各アイドルに軍隊のごとく存在し、コンサートの度に一糸乱れぬ鉄の統率行動が見受けられた。しかし時代は変わり、今や通常のアイドル活動で彼らは死滅(追放)してしまった。そんな彼等が移住したのがアニメ・ゲームアイドル界。おそらく、彼等にとっても昭和アイドルが終わった後の受け皿だったのだろう。そして凝り性のオタクにも伝染し、今や「オタ芸」として一定の市民権を得られている(その分、迷惑行為であることも再認識されてしまっているが)。
アイマスステーションで、男性声優がゲストに来たときの女性声優の反応に、声優ファン達が怒り心頭になったというのも、「昭和アイドル」の文脈で見れば当然の帰結。彼等にとっての「アイドル=偶像」を汚された、またはそう信じていたものが壊された瞬間でもあったからだ。
そう見ると、アイドルマスターのアイドル達はまさに、この昭和アイドルではないかと思う。実際、この文脈で9.18事件の騒ぎをフィルタリングしてみるとあちこちに共通点が見え隠れしているし、そういう視点故の怒りというのも、案外合理性があるように思う。
となれば、バンナム側はそういうことを念頭に入れたプロモーションをしていくのが、ある意味正解だったのかもしれない。(隠された部分は、おのおので自由に想像してOKだし)
(追記)
twitter上でこのことをつぶやいたら、昭和アイドルに詳しい方から色々面白い見解をいただいた。どこかで一度は聞いてみたい話だったのとても嬉しかった。嬉しかったので書きだしてみる。

  • 本物中の本物のアイドルは当時でも恋愛が公になってもビクともしなかった。松田聖子しかり。勿論嫌だった人もいるだろうけど、それだけでは壊れない多様性のあるファン層だった。女性ファンも未だに多いし。
    • (私)おお…。では「本物中の本物」ではないパターンの場合は当時どうだったのでしょうか。寧ろアイマスはそっちのカテゴリと思うのですが…。
  • 比較的有名な所だと木之内みどり(70年代あたり)ですかね。派手な恋愛スキャンダルでアイドルとしてはやっていけなくなりました。逆に浅香唯なんかはフォーカスされた後に記者会見で交際宣言と言う荒技を敢行しましたが、人気は落ちなかったです。
  • 先にあげた松田聖子浅香唯にしろ国民的アイドルと呼ばれた人達は強いですね。ファン層が多彩だからこその"国民的"。ファンの疑似恋愛の対象としての価値しか作れなかった人達とは格が違うと思います。
  • そしてアイマス2天海春香17歳の目指すところは国民的アイドルで、ゲームの目的も国民的アイドルユニットを作り出す事ですね。スキャンダルに負けなかった過去の国民的アイドル達。アイマス2の現状。色々考えさせられます。
    • (私)ネットだとミクとアイマスの対比になるかな。ミクの知名度の高さとファンの多彩さと裾野の広さはアイマスではかなわない。“強さ”も。
  • まあミクに関しちゃオフィシャルがキャラクターに殆ど色付けてないですからね。色が付いてないって安心感は凄い。自身の妄想を邪魔するもんが無いんだから。何か不味い事が起きるとしたら、SEGAがミクを自分の所のキャラみたいな扱いをした時じゃ無いかと

顔が見えない分、気軽に興味を持った相手とやりとりできるのはtwitterの良い点かもしれない。