太秦ライムライト

映画『太秦ライムライト』 オフィシャルサイト 福本清三主演
福本さんの事を知ったのはずいぶんと昔。元々裏方職人系が好きだったという事もあるけど、だからこそこの映画があることを知ったときはぜひ見たいと思ってた。しかし気がついたら忘れていて次に気がついたのは海外で賞をとったというニュース。早速見に行こう…と思った頃にはほとんどすべて上映終了。幸いツイッターで上映情報を教えてくれた方がいて、ようやく劇場で見る事ができた。タイトルからしてチャップリンを翻案としていることは予想してたけど、まさにその通り。まあライムライトを見てから時間が経ってしまって内容はかなりうろ覚えだったけど。
基本的に地味な映画。さらに主人公の主観を時間軸においているので、映像岳で見ていると時間経過がかなり唐突に感じてしまう。雰囲気だけならここ数ヶ月の物語に見えてしまうけど、実際には何年もの経過を描いている映画である事は、劇中の展開に少し疑問符が出た頃に「ああ、そういうことか!」と納得する状態だ。ただ、本作のテーマからして客観性のある時間経過よりも、主人公の体感時間をそのまま持ってきたのはテーマには合っている。
さらに福本さん自身の台詞量が主演とは思えないくらい少ないので、見ていてもどかしさすら感じる。しかしその分あまりに自然に映像に入ってくる芝居や佇まいがすごい。ほかの大御所やら俳優さんが「演技している」ことが技量となっているけど、福本さんに限っては日常のままふらりとそこに入り込むほどの自然さ。ただこれは「天然」なのではなく、ずっと芝居の世界で生きていたことで生活そのものが芝居になっている域という感じだ。脇を固めているのも大御所ばかりですごいものがある。というより、本作については福本さん以外のスタッフはまるで見ていなかったので、OPの頭に福本さんの名前が出たときにニヤニヤした後に大御所の名前がずらりと並んでいて正直驚いていた。あと少し茶目っ気のある映像は、全員集合で「警笛ならすな」の全員集合シーンくらいか。あそこだけはどこのハリウッド映画だよと笑ってしまった。そして殺陣のシーンは圧巻。昨今の時代劇テレビでもここまで緊張感のある殺陣はなかなかお目にかかれない。出演者たちの気合いと本気が伝わってくる。
まあ日本における時代劇の斜陽を寂しくも描いていることには変わりがない。「どこかで誰かが見ていてくれる」「新しい時代劇を若い世代が」という言葉も劇中で語られているものの、奇しくもパンフレットで福本さん自身が語っているように「それすらも実際には難しい時代」なのだろうけども。