星井美希とlain

7/11に765プロ所属アイドル星井美希showroomにて僅か30分とはいえリアルタイムコンサートを、そして7/12にニコニコ生放送にてserial experiments lainの一挙生放送があった。ある意味、「ネット」というキーワードにおいて特別になった二日間かもしれない。

星井美希 in showroom

リアルタイム3Dモーションでショーを行ってきた「THE IDOLM@STER MR ST@GE!!」。そこでやる予定だった星井美希の公演がコロナで中止となり、その代わりとして行われたもの、ということになっている。MR ST@GEは秋月律子回に見に行って、会場のファンとリアルタイムにやり取りをするその様子に度肝を抜かれた事を覚えていたので、おそらくその延長線上であろうとは思っていた。違うのは、MR ST@GEはチケット争奪戦と居住地に恵まれた一部のアイマスファン(それも無印アイマス=765PROASのファン)にのみ話題になっただけだったものが、無料でネットに公開されたということだった。わずか30分とはいえ、あの時自分が感じた衝撃をアイマスファンが感じてくれればいいな…程度には思っていた。始まるまでは。
showroomは少ししか行ったことがなかったが、星井美希のカテゴライズが「アイドル」であり、いわゆるヴァーチャルキャラ扱いではなかったことにまず少し驚きと感嘆を覚えた。長年のアイマスファンとしては、このカテゴライズだけでも喜ばしいことだった。そして公演開始…MR ST@GEを経験していたにもかかわらず、ゲームキャラがリアルタイムでリアル世界に侵食してくる様子は、やはり衝撃だった。もちろん、そこには10年以上を重ねるアイマスというコンテンツの分厚さと、プロデューサーの指示が不要なほど星井美希と同一化した声優さん(長谷川明子)とアクター、そして何よりバンナムが培ってきた技術力が津波のように押し寄せてきたことも要因だろう。それを10万人近くのユーザーが眺め、騒ぎ、話題にし、(その意図が星井美希バンナムにはなかったにせよ)ある意味近い分野である「Vtuber界隈」に激震を起こしたという事実が、多くを語るまでもなく「事件」となった。正直なところ、ここまでの騒ぎになるとは想像もしていなかった。一アイマスファンとして「うれしいなあ。少しでも多くの人が見てくれればなあ」程度だったからだ。幸運にも、アーカイブ化を検討してくれているようだが、あの衝撃は「リアルタイム」であったからこそ感じられるものだと思う。もしかしたら、別のアイマスキャラで同様のことをやってくれることがあるかもしれない。今回、リアルタイムで見れなかった人は、ぜひ見に行ってほしい。「初音ミクが舞台で歌い踊る」とは別次元の驚きがあることは保証する。

serial experiments lainの一挙生放送

「カルトアニメ」…という枠組みは、リアタイ視聴者で純粋な作品なファンとしてはあまり好きではないのだけども、それでも20年以上話題にされてきた以上は、その看板は勲章にもなるのだろう。というか、令和の時代にニコ生でlainを実況できる日が来るなんて誰が想像したか。
もう何回見たかわからないが、初見が見るにはやはり覚悟がいる程度にハードルは高い。あのころは週一だから十分考えたり休んだりする時間があったが、一挙放送だとそんな暇は与えてくれない。…そういう意味において「委員長・月ノ美兎」の解説付き実況は初見には本当に助かったろう…(というか、ムカデ人間の時も思ったけど、委員長の博識とトーク力の高さはなんなんだろうな、ホント)。
とはいえ、20年以上前の作品とはいえ、見るたびに何らかの発見あるいは示唆に気づかされるのが本作。玲音・レイン・れいん・lainという多重少女の物語とも言えれば、リアルとネットの境界線の話ともいえ、放送当時にネット界隈で「ネット論・哲学論・心理学」が入れ混ざって様々なコミュニティが議論や考察を行い、PCの壁紙をlain風にするツールが有志の手によってあまた作られたのも、今考えても当然だろうな、と思う。(もちろん純粋なファンアートやギャグサイトもあったけど)というか、今のOS環境に合わせたlainタツールが欲しい。
余談だが、久々にゲーム版lainを引っ張り出し恐る恐るPS2に突っ込んだら無事に起動した。PS1当時の「あまりの挙動の重さ」は多少解消されてはいたものの、やっぱり「これはゲーム…ではないよなあ」という不思議なモノと思う。コレクターズアイテムなのは間違いないが、アニメ版lainを知ったからゲーム版もやってみたい、程度で手を出すと(多分悪い意味で)やけどをするから注意をした方がいい。まあ…今や市場で数万のプレミアがついているらしいし、現在の版元も再販する気は皆無らしいので仕方ないともいえるけど(クラファンで金集めてsteamで公開するのが、今時のやり方なのかもしれない)。