アイドルマスター2騒動

まあ色々情報が出ていることもありまだ購入していない。ただ、あちこちで「2.24事件」等と称して恐ろしい勢いでネタバレやら証拠画像やら実況が出ているので色々チェックはした。そして公式ブログのメッセージも確認した。その上で、個人的に感じたことをまとめる。

  • ユーザーと制作者の決定的な意志の断絶

これは「9.18事件」の時にも判断できる材料は多かったけど、発売後のゲームの内容とユーザーの声と制作者側の公式声明を比較してみると、もうどうしようもないくらい違ってしまっていることが明確だ。少なくとも、過去のアイドルマスターシリーズをプレイしていたPが望んでいたのは「箱○版1の正当進化系にこれまでのシリーズで追加されたキャラが増える」ことだった。勿論、商品として本当に1のままであることはNGであることも大半のユーザーは理解していたろう。その点は開発側もある程度は理解していたろうと思う。
ただ開発側…少なくとも石原氏と坂上氏はまったくそうは思っていなかった。正式ナンバリングではあるものの、事実上「アイドルマスター」というコンテンツを解体&再構築することを狙っていた(社内アピールの必要性もあったんだろう)。ゆえに既存ユーザを意図的に切り捨て*1、看板とキャラデザと声優以外を事実上すべて作り直した。当初、「これはパラレルであり、1の正当続編ではない」発言があったけど、おそらくその予防線のつもりだったんだろう。だけど、しばらくしたらその声はなくなり、どう聞いても「過去作は事実上切り捨て、2から新たなアイドルマスターを作り上げる」という方向性に変わってしまった。さらに困ったことに「この設定に付いてこない人はアイマスPに非ず」という空気を、制作側が積極的に宣伝戦略に放り込んできた。これが決定的だった。

普通に考えれば当然制作会社のものだ。会社が世界をユーザーに提示し、その上でユーザーが楽しむ。そういう関係だった。ただその点アイマスはかなり特殊だった。アーケード展開当時、アイマスをやっていたPはごく一部であり、箱○版リリース時も一部ギャルゲー好きや画質好きが飛びついた程度で、ソフトとしての販売実績は高くはない。ただ、その少数のPが湯水のようにDLCや関連グッズを買い漁り(その中には自分も居た)結果的に、「国内オンリー販売なのに、箱○DLC売上世界トップスリーに入る」記録を叩き出した事実はある。が、それだけでは理由にならない。DLCで売上が凄いから遊んでみよう…というユーザーはまずいないからだ。
アイマスが知名度を高めた理由は、明らかにユーザーサイドによる数多の二次創作(特にニコニコ動画)によるものだ。明確に言えば著作権的にグレーなものが多かったが、制作側は黙認という姿勢を貫いたため、結果的に「買わないけど良く知っているゲーム」ということでも有名になった。「アイドルが番組の企画で芸をする」という視点をユーザーがうまく利用し、様々なジャンルに手を広げたのも成果の一つだったろう。そう意味において、「アイマスを世に出したのはバンナム」だが「アイマスというコンテンツと世界を広げたのはユーザー」という事態が発生した。
メーカーとしては「人気増加の一助になったのは嬉しいが、コンテンツホルダーの手で制御できなくなったら、商売として終わり」ということもまた理解していたと思う。おそらく「正式ナンバリングで、コンテンツの主導権をユーザからメーカーに取り戻そう」という意図は強く働いたろう。おそらく、その意図と石原氏&坂上氏の「アイドルマスター再構築」の意図が合致した。とは言え、完全に無視すれば既存ユーザーの反発は大きい。それ故に「二次創作を下地に作ったよ」という言い訳が生まれた…これが最大の誤算だったんだが。何せ、二次創作を作ったP達のおそらく全員は「そんなものは望んでいなかった」からだ。
二次創作の面白さは、設定の穴を埋めることや公式ではやりそうにないことを想像を広げて色々やってみることにある。その中にはシリアスもあればエロだってある。どれも公式が良い感じに脇が甘く、だが一本軸が通っているからこそ楽しめるのだ。その部分を公式が「バブル期の地上げ屋のように」塗りつぶしたのが今回のアイマス2。
その結果、「ゲームとしてのアイマスをプレイするのは初めて」という人にとっては「ふーん、こういうゲームなんだ」という程度に受け止められるものの、既存ユーザーの多くは違和感しか感じない内容となってしまった。

  • 中途半端なシステム変更

制作側は「キャラゲー」「シナリオゲー」「システムゲー」のどれにするか、最後まで絞りきれなかったフシがある。中途半端にどれも残したいので、適当にあちこちを切り捨てて食い散らかした結果がこの有様ではないかと感じる。
色々見てきて思ったが、おそらく今回は全体として「システムゲー」としたかったのだろうと思う。制作側もソレを指して「骨太ゲー」と連呼しているのだろう。だが、パラメーター管理のシステムゲーとして楽しいという声はほとんど聞こえてこない。むしろ「1よりマシという気がするけど、でもとにかく面倒くさい」という声が多い。
「シナリオゲー」としてはどうか。前述のように「キャラの主導権を制作側に取り戻す」なら、過去を捨て去りキャラだけもらい、シナリオを強制的に書き替えた上で「これが公式である。嫌ならばアイマスファンをやめて出て行け」といえば良い。パラレルワールドだのなんだのと「過去作とは違う」と言い訳を繰り返したのもこれが理由だろう。そして、少なくともそういう内容で発売できた段階で、これは”成功”したと言える。数多の既存ユーザの怨嗟の声とファン内部での血みどろの抗争を呼び起こして、だが。
キャラゲー」としては致命的だ。過去の設定をおざなりにするどころか、中途半端な二次創作設定の流用とシナリオライター独自解釈過ぎる展開にした段階で色々終わりすぎている。少なくとも「ちょっと違う気もするけど…まあコレもありかな」程度の評価であれば問題なかった。が、今出ている評価の大半はそんなものではない。一番マシなものでも「ここまで改変するくらいなら、完全新規キャラでゲームを作ってくれ。なぜ既存キャラを使ったのだ」という程だ。シナリオそのものにも品性がなくひたすら下品。システム側との相互関係もあまり良くないようで、「どのアイドルも躁鬱病なのか」という声すら聞いた。

  • 致命的な宣伝戦略

まあ、上記は色々細かい重箱つつきに過ぎない。アイマス2最大の問題は、おそらくこのテーマに絞られる。結局、制作側は最後まで「様々な意味で正しい」宣伝戦略が出来なかった。これは今現在もそうだ。アイマス2制作側が一貫して話していることは簡単だ。

  • これが新しいアイマスの世界だ。否定するのは勝手だが、真実はここにしかない。キャラの行動や言動もすべて”我々が”想像を重ねた正式なものだ。ゆえに黙って受け入れろ。
  • 受け入れられないPは、過去のアイマスをも否定したも同然。そんな彼等がアイマスPを語る資格はない。
  • ゲームに批判的なPは、やり込み不足かギャルゲーしかプレイできない軟弱者だ。そんなPにはこのゲームを評価する資格はない。
  • キャラの言動に批判的なPはリアルを知らなすぎる。そんなことを批判するようなら、このゲームを評価する資格はない。

公式自身が、自分自身の絶対正当性を強固にアピールしている。ユーザーとの協調関係は存在せず、メーカーにこびへつらうYES-MANのみ認めるという姿勢を雑誌や公式ブログの発言で明確にしている。さらに、ユーザーから非難を浴びるポイントは、いわゆる「声優の盾」「キャラクターの盾」をはじめとして「既存ユーザーへの責任転嫁」「ユーザー間の対立に持ち込む事による火の粉逃れ」等のあからさまな方法を駆使し、自身に直接問題が提示されることを極端に避けた。
当然の事ながらユーザーはその姿勢にあっさり気がつき批判したが、上記理由によってほとんど伝わっていないだろうし、それを追求するメディアもないだろう(あの署名も事実上”重クレーム対処”の一環とされたはずだ)。
だから、アイマス2になんらかの批判があるものの大半はゲームそのものではなく、その背後にいるスタッフに対してもの申したいのだ。しかし、公式は「ゲームをプレイしろ。すれば分かる」の一点張り。これでは進展することなんかアリはしない。永遠の平行線だ。

個人として、システム面だけを語れば。

  • 社内ライバルとしての「竜宮」システムは面白い。
  • 序盤に3人をPが選んだら、残りメンバーから「竜宮とP」の合計4人をランダムに作るシステムにする。*2
  • 竜宮には専用曲と専用衣装を付ける。しかも一回は敵に回らないと、それの使用や閲覧は解放されない。
  • ラストはPチームと竜宮チームの頂上決戦、または木星チーム等のライバルとのバトル。

こうしておけば、今ある問題のいくつかは解決できたのではないかと思う。キャラパターンが大変かもしれないが、これならユーザだって喜んで買うはずだ。ギスギスさせる必要だってないし、トンデモシナリオを突っ込む必要だってない。
ともあれ、少なくとも。
自分自身「アイドルマスター」が好きなことには変わってはいない。ただし、自分がアイドルマスター2というゲームを今後買うかは別にしても、当分の間はXBOX360版「アイドルマスター2」というゲームのことをこのブログ上で話題にはしない。自分でも驚くほど冷めている。今回の一連の事件経過を今後も見てゆくだろうけども、アイマスだから…というよりも、ネットウォッチャー的野次馬興味が大半を占めているのが正直なところだ。

*1:彼等にそのつもりがなかったのなら驚きだが。

*2:周回プレイ用に重複回避管理も実施。