艦これ小説

艦これは昨今では珍しく「作中設定がはっきりしていない(あえてさせてない)」コンテンツであり、「想像するのが面倒で、間違うのも嫌だから、とにかく公式が情報として明示しないとダメ」という現在のオタク嗜好とは違う状態。むしろ過去のコンテンツで取っていた手法で、個人的にも好きなタイプだ。そんなコンテンツなので、出てくる小説もそれぞれの作家の個性が出ていて非常に面白い。まさに「俺の鎮守府大集合」だ。

最初に読んだのがこれ。海戦シーンの描写が非常に臨場感があふれているので、「いわゆるラノベ的」なものを想像していた身としては驚き。むしろ海外小説を読んでいる気分だったが、あとがきを読んで納得。もともとそっち系が大好きな作家さんだったのね。なので非常に高感度高し。その分、多少読者を選ぶ気もするけど。続きも近日発売なので楽しみ。ラノベ的、かつゲーム寄りの描写。ラノベの中心年齢層や歴史よりゲームのほうが好きな人にとっては一番読みやすい作品と思う。それゆえに「ああ、この作家さんの鎮守府はこんな感じなのね」という他人のプレイをのぞき見る感覚にもなる。「陽炎、抜錨します!」より鎮守府設定がはっきり描かれているので、そういうのが好きな人にとっても面白いだろう。その分架空戦争物として読むと、多少物足りないかな。架空戦記や萌えミリ系テキストでは名が知れているだけあって、安定感がすごい。「陽炎〜」は戦術としての戦闘描写が素晴らしかったが、こちらはより戦略的観点からの「俺鎮守府」設定となっていて住み分けがなかなか面白い。ちゃあんと戦争していること、前世?のことをしっかり設定に入れていること、ゲーム的設定を絡ませて執筆している部分は、さすが手馴れている。まだまだ続きがあるようなので楽しみ。艦隊これくしょん -艦これ- とある鎮守府の一日「本日天気晴朗ナレドモナニモナシ」」
番外。コンプティーク2014年1月号のおまけ。内容は「一航戦、出ます!」と似ている。あえて言えば同人二次創作的なノリだろうか。本として気になったのは、執筆者が三人いるのに、それぞれがどこを担当したのか明示されていないこと。章わけだろうかとも思ったが数が合わない。たとえおまけでもそれぞれ名前を出してあげるのは、商業誌として出版社の最低限の義務だと思うのだが。