シムーン

Simoun(シムーン)3 [DVD]

Simoun(シムーン)3 [DVD]

今期終了第7弾。戦争とモラトリアムをうまく融合していたと思う。
正直最初の頃はあまり評価は高くなかったんだけど、絵の品質の高さのみならず、戦争物としても物語としても最後まで丁寧に作っていこうという姿勢がとても好感が持てた(同時期の戦記物が「ガラスの艦隊」だったしねえ・・・)。多感で不安定な少女という時期を、敗退戦の末解散に至るまでの不安定な情勢にもかけてたのかな。宮国をかつての大日本帝国と重ねて考えるフシもあったけど、最終回近くで会話されていた冷戦構造やら赤紙の話を見ていると、それも当たりだったのかもしれない。
一番最後はとても大団円とは呼べない状況のままで、設定についても一部はつながった物もあれども(「アー・エル」の語源とか)多くは投げっぱなしという感は否めない。でも、この物語ならそれも一つの選択肢なのかとは思う。色々な情勢(世界も国家も)は、まだ着地点を見いだせないまま不気味に進行していて、その将来も暗いことが示されている。「永遠の少女」というものだけが安定を手に入れた*1ようでも、劇中にもその末路が示されているようにその選択肢ですら幸せな物とは思えない。世界の未来は暗いけど、それでもかつての少女は自信の未来を信じるってことか。あるいはそういうイヤなものを受け入れなければモラトリアムからの離脱は叶わないという暗喩かもしれないけど。真の意味で「安定」を手にしたのは「自身の生き方と選択に満足を求めた"大人になった人"の心」だけということなのかな。まあ、そう考えていくと、こういう締め方しかなかったのかもしれないかも。・・・とはいえ、せめてもう少し詳しく個別エピソード締めてほしかったな、という気はするけど。あと、なぜか自分の中でブームになってしまっているタイムトラベルネタとの絡みは、設定としては面白いけど、いまさらなあ・・・という気はした。というのも、「少女達が持つ成長への不安」と「国際情勢と戦争」だけでけっこう満足していたから。トンデモ設定が語られていても、物語は真面目に淡々と語る姿勢を貫いていたせいか、「必要なネタ晴らしなんだろうけど、今更そんな気にするようなことではないよ」というのが個人的な感想だった。続編はないと思うけど、なんとなく心に残るアニメにはなったと思う。
・・・あ、あと。「このアニメに限らず、俺が気に入ったキャラは何故に不幸になったり死んだりする奴ばかり」をいみじくも再認識させてくれたアニメではあった。

*1:モラトリアムの固定化、ないしは夢見る時代の偶像化?