図書館内乱

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前作で「人権擁護法案」との絡みの感想を書いたけど、まさか本当にそのまんまの展開が繰り広げられるとは思わなかった。ここに書かれていたことは、まんま「人権擁護法案」に対する問題点の一部を切り出しているし。肉体的暴力"だけ"を積極排除して、さらにそのことだけを支持する法律が出来た世界・・・って、まさに今日本がそうなりつつあるけど・・・では、こういう法律の恣意的運用を行える人or集団、正論を「紙一重の違いで」詭弁として駆使できる論者が力を得る(それが慣習的に正義かどうかなんてのは何ら価値を持たない)。正論で言ってきた相手を論理で言い返すと余計に罠にはまる構造もうまく表現できていたしね(これって昨今流行っている新興宗教や悪徳商法がらみの事件で良く聞く話とそっくりですな)。そこに、正論派からするとバカと同義語である(そしてそれこそが攻撃材料にもなる)「感覚派」をうまい具合に絡めて対抗思想に持ち上げたのはなかなか面白い。まあ、この状況は現代日本の社会の縮図とも言えるのだけれども。息が詰まってしまう世の中は本当にイヤな世界ですな。そんな堅苦しくて息が詰まる話ばかりなので、主人公二人の"ドツキ夫婦漫才"は一服の清涼剤を遙かに超えて楽しくて気持ちが良い。ちなみに、劇中本の「レインツリーの国」も読む予定。
王子様の正体についても展開があったし、事実上次が最後になるのかな(メディア良化法の最期まで書ききるわけにも行かないし、この部分は現代社会への強烈な皮肉ないしは警告という部分で終わるんだと思う)。・・・でも、この本は中高生にこそ是非読んでほしいなあ。