探査機
はやぶさをテーマにした啓蒙本・・・なんだろうけど、その内容は日本のロケットの父である奇才・
糸川英夫の半生を通じた組織論・思考論であり、その考えを元に作られた
宇宙研(
ISAS)の物語とも言える。内容の後半に入れば入るほど、効率化&硬直化した官僚制というものと、
宇宙研の成り立ちと組織論・考え方の対立の話になり、最後には政治力による”本来必要な技術・情報・伝統の消滅”という現代日本が抱える「無思考の効率最優先主義」の問題が見えてきてしまうことが悲しい限りだけど。この本を見る限りだと、技術立国を標榜する政府と官僚組織が、その看板を支えてきた日本の技術畑を焼き尽くしているようにしか見えてこず、非常に悲しくなってしまう。例えば、あまり表に出てこない
M-Vロケットという物が、本来の意味での糸川教授から連なる日本ロケット技術の血脈であること、そしてこれが世界にも類を見ない高度技術の固まり(しかも純国産!)という存在でもあり、日本宇宙航空産業の結晶であることはこの本に十分に書かれているのだけれども、(アメリカからの横槍でもあったのか)これを政府は廃却することとしてしまった。・・・せめて、
はやぶさが帰還する2010年までには少しでも改善されていることを切に願う。