ラリージャパン2008〜個人的総括

写真などを眺めながら、もう昨日のことかと思いつつ、今回の旅行中に負傷した手首と指と膝を眺める。・・・手首はねんざかもしれないから、整形外科に行った方がいいんだろうな。

  • まずは個人としての感想。

わざわざナイトラリーなキナ林道を見に行くようなマゾ的な自分なので、一般的な感想とは違うかもしれないけれど、ひとまずラリーとしては楽しめた。キナは観戦場所として自然気象的な環境は厳しかったけど間近でラリーカーがぶっ飛んで行くのを見れたのは良かった。ぶっちゃけ、牛糞も足下の悪さも「まあ、ラリー観戦ならこんなのもありだろ」とか思っていたし。MCの人も手慣れた解説をしてくれたし、最後まで残った20名前後の観客とMCとの交流も(氷点下でも)ハートフルでとても良かった。それに、エゾシカの鳴き声すら聞こえる北海道の山の中から見る星空は、恐ろしいまでに美しかった。
楽しみと言えば「初心者マーク」。どうやら、選手が持っていた国際免許証が日本で通用しない国だったようで、改めて日本で免許を取り直した、ということらしい。勿論初めての免許と言うことになるので若葉マークも出てくる。んで、それを付けたまま爆走するお茶目な選手が結構いたらしい(笑)。
札幌開催については、事前評判通りアクセスが便利だった。交通の便は多いし宿も多いし店も多い。仮に十勝(帯広&陸別)だったとすると新千歳空港から特急でも1〜2時間かかる距離。帯広にアクセスする地方空港はあるにはあるが、一日の便数が非常に少ないみたいなので、おそらく飛行機のチケットを取るだけでも大変だろう。そう言う意味では、歓迎する変更ではあったと思う。・・・そう言う意味では、ね。
札幌SSSはどうにもねえ・・・。ドーム球場は広いと思っていたけど、実際ラリーカーが走っているのを見ていると明らかに狭い。しかも床がつるつるのコンクリートでスリッパー過ぎる。おかげで全力で攻めた選手は壁にぶつかるかスピン。無事に走った選手は慎重に走った選手のみ。ジャンピングスポットだって気持ち浮いている程度。これでは盛り上がらない。その上、排気ガスが結構喉を痛めてしまう。観客席のレイアウトもダメだった。A席よりB席の方が見晴やすいという事実がひどい。あと、サービスパークも入場範囲制限が厳しすぎて、ちっとも面白くない。表彰式も・・・なんであんなところでぽつねんとやっているんだと。ラリーの表彰と言えば、ファンと選手が至近距離で大騒ぎして讃える場じゃなかったのか。野球やサッカーの表彰式と同じ事をやってどうするんだよ。
・・・ということで、札幌初年度開催ということをさっ引いても「良かったね」と素直には言えるものではなかった。経験不足以前に「少し考えれば改善できる」こともおざなりだったという気がする。
あと個人的反省。カメラ撮影やビデオ撮影についても、事前にしっかりと準備しておけば良かったと後悔(まあ限界はあるけど)。見に行ったSS等で「そっか、ここではこういう撮影方法が良いんだ!」と気がついた頃には、当たり前のようにワークスは通過した後ばかり。くやしいなあ。

  • 次に全体としての感想。

とにかく、運営には様々な点で猛省を促したい。なんせ、マイナス点を上げれば枚挙に暇がないのだから。今回の運営の中の人が「十勝時代から引き続きやっている」のか「札幌開催に合わせて新規で立ち上げた」のかは知らないけど、とにかく「WRCラリー」という競技&観戦に対する知識も理解も常識も、そして何より「情熱」がまったく感じられなかった。確かに十勝時代での「地域振興&町おこしの唯一無二チャンス」なんて意識は、年間通じて数多のイベント(野球、サッカー含む)がある札幌には期待するまでもなく、おそらく「数多あるイベントの一つ」程度の認識だったのは想像が付く。WRCが「世界的なイベント」である事実があっても、ラリー競技は日本ではどうしてもマイナーであることも積極的になれない理由だったのだろう。
しかし、そこを譲ったとしても今回の運営は非常に問題が多かった。コース設定*1、観客席の選定*2、サービスパークの入場規制*3、スタッフの情報不足&知識不足*4、オフィシャルスタッフとしての競技運営の不手際の多さ*5などなどなど。地域自治体の無理解・無関心に至っては、もはや「もしかして無視してる?」と思うくらいに酷かった(役所や警察サイドから、無理解から来る”半ば妨害”とまで思いかねない行為があったという話もある)。最寄り駅にすら、まともなポスター&のぼりの一本もないなんてどういう事なのだろう。しかもすべて「車ユーザー」しか見ておらず、非車ユーザーのファンへの配慮は微塵もないと断言できる。十勝時代は、始発前の駅前広場からシャトルバスの発着所までバスを出していたように記憶しているのに、そういうのもまるで無し。想像力がないのだろうか。
今回、十勝開催から札幌開催に変更された理由の一つにWRC側からの要請があったのが大きいのはわかる(十勝は観客は素晴らしいけど、競技環境やルート設定に問題点の指摘が多かった)。だから単純に「十勝に戻せ」というわけにはいかないのは理解できる。実際、十勝開催の後期になると当初の「町おこし&ラリーを盛り上げよう!」という機運が薄れ、悪い意味での”田舎根性”が丸出し(ぼったくり、横柄、拒絶的な動向)になってしまい、観客の足並みも急速に途絶え、選手側からも運営に対する不満が大きくなってきた、というのは聞いている。
とはいえ、それを差し引いても(仮にも)日本開催4〜5回目として実施される運営ではもはや無い。もちろん「十勝時代に積み上げたノウハウ」をゼロにして良いなんて理屈が通るはずもない。なのに、どうも今大会を見ると「十勝時代を生かした運営」をやっているようにはとても思えなかった。しかも残念なことに、来年の日本開催はない(さらに再来年は一応候補に挙がってはいるが、もちろん確定しているわけではないし、こんな体たらくでは果たして選定されるかどうかも怪しい。)。つまり十勝時代と違って「来年があるから、今回の反省をふまえて・・・」なんてことは出来ないのだ。そして二年前のことを反省して動けるほど、人間は便利には出来ていない。そもそも、大会運営にあまり興味がなさそうな運営事務局&無理解・無関心な自治体関係が、そんなことをするとも思えない。

あまり文句を言う物ではない、という方も当然いるとは思う。ただ、「次回も必ず日本で実施されるわけではない」ことが当然のWRCというイベントにおいて(モンテだって外されたのだ)、あまりにやる気のない姿勢はプラスに働くことはない。そして残念ながら、「日本で開催できることに感謝。だから不平不満は我慢しよう」という甘え同然のレベルは自律的に通過して、「さあこれだけの準備がありますよ。次回も是非来てください!」と積極的に訴える時期に入っているべきなんだけど・・・。まさか、日本で開催して欲しくない人ってけっこういるのかな。
WRCにはまた日本に来て欲しいけれども・・・仮に大会が開催されたとしても、今のままではファンと選手が嫌気がさしてしまっているのでは・・・。
で、ぜんぜん関係ないけど。個人的にはSS見に行ったら「Info>000>00>0>ワークス>プライベータ>(事故の場合はJAF車)>スイーパー」までちゃんと応援して手を振るのが楽しいと思ってるんだけど、同じ思いの人ってどれくらいいるのかなあ。SSキナなんて、スイーパーの中の人が手を振り返してくれたのがまた良かった。

*1:「良いコースではなかった」(ミーカ・アンティラ〜BPフォード、ラトバラのコドライバー〜のレース後コメント(Rally-Xモバイルより)。他の選手も同様コメントあり。

*2:最前列しか見えない、牛糞だらけ、どろだらけ、さらには「観客席がない」など。なのにとても高額なチケット代。

*3:ファンとふれあう最大の場所なのに、一般的イベントの「舞台裏」的な扱い(=見せないのが当たり前)になっていた

*4:極基本的な情報すら把握していない人が多かったし、どうもスタッフ間情報のやりとりも問題があったようだ。

*5:事前〜期間中まで。選手から「英語が分かるスタッフが一人もいないんだ!」なんて台詞が出るってどういうこと!?