おせん(16)

おせん(16) (イブニングKC)

おせん(16) (イブニングKC)

あれほどの騒動が起きた後の本、しかも第一幕完ということで、どういうメッセージが入っているかを確認するのが最大の目的だった。
読んでみて、作者も編集者も出版側も、みんな本当に怒っていたんだとはっきり理解した。そしてきくち正太自身も、自身のライフワークとして何をするべきかと言うことを読者にはっきりと宣言するに至った、と。
通常、巻末にあるようなメッセージはブログや雑誌巻末、週刊or月刊誌のインタビューでその場限りとするのが通常なのに、ずっと後世に残ってしまう単行本の巻末に"はっきりと"収録していること。それを担当編集・編集部・出版会社が認めていること。少なくともその二点は明白だ。
さらに言えば、もしこの巻末メッセージが作者のわがままに過ぎないのであれば、すぐに作者を切って終了*1しても良いはずなのに、すでに第二幕の連載を開始しているということは、作者以外の周辺の人々も多かれ少なかれ彼と同じ気持ちであろうことの証明とも言える。だからこそ、第二幕最初のテーマは、まさに「意趣返し」と言えるテレビ業界の話を描くことを編集も出版もGOを出したのだろう。連載当初は「周りをムリヤリ説き伏せて、作者が暴走してるんじゃないか?」という話もあったけど、間違いなくデマと今なら言える。
職業漫画家にとって、この行為は大きな一歩であると同時にいばらの道でもあるかもしれないけれども、その意志はいちファンとして支持をしたい。

*1:業界が長い作者とはいえ、ドル箱作家ではないきくち正太を切ろうと思えば、出版社としてはさほど苦労は必要としないはず。