宇宙基本計画と月探査計画

3/9のエントリでも書いたように、今回突然ぶち上げてきた月探査計画については「気持ちは分かるけど、理由と意義がさっぱりわからない」という感想は今も変わっていない。軍事の本にも良くあるように、日本は「世界でも人の命の値段が極めて高い」国である上(=人の死に極めて敏感)、こと宇宙関連の日本の発展について「大手マスコミがこぞって否定的」であるためだ。そんな状態で膨大な金が出るとは思えないし、必要な技術と経験も「日本として独自に獲得」しなくてはいけない(宇宙飛行士が複数人生まれているったって、全部欧米ロシアにおんぶにだっこしている状態ということ、分かっているのかな、と)。
この計画に限らず、先進的なことを成し遂げるには失敗(技術的にも人的損失的にも)はあるに決まっているが、何故か今の日本は「ただの一度も失敗せずに大成功を収めなくてはいけない」と考える人が多くなってきている。歴史や先達の言葉を借りるまでもなく、新しいことをやろうと思えば膨大な失敗という貴重な経験がないと前に進めないというのに*1。しかも、すでに世界的に認められている日本独自の実績と経験(M-Vロケット、衛星投入&運用技術、無人衛星探査技術等々)を全部生け贄にするいう話や、有人月探査計画という話に「ASIMO等のロボットを使えば」なんて案まで出てきているという・・・もはや有人ですらないじゃん。
そんな気持ちでいたところ、宇宙作家クラブの掲示板で「エリアル」「宇宙へのパスポート」等の作品で知られる笹本氏が、この件について長文を投稿したらしい。そして、それを(許可を得た上で)松浦さんが自身のブログに転載している。文章自体は長いけど、小説家&宇宙ファンとして非常に分かりやすく現状を分類して、感想を述べている。今回の計画に関心があるなら、この記事の是非はおいといて読むだけの価値はある。
宇宙基本計画パブコメにむけて:笹本祐一さんの意見(1) 日本独自の有人月探査計画に見えた月の裏側: 松浦晋也のL/D
宇宙基本計画パブコメにむけて:笹本祐一さんの意見(2) 月への遠い道: 松浦晋也のL/D
宇宙基本計画パブコメにむけて:笹本祐一さんの意見(3) 最悪の選択 : 松浦晋也のL/D
疑問がすべて氷解するようなことはなかったけれども、自身の中でもやもやしていた部分を綺麗に整理してくれたことに感謝。そして基本的には、この笹本さんの意見に賛成。

*1:ペンシルロケットを作った糸川教授は、実験に成功した後言いました。「失敗してくれた方が多くの情報が得られたのに」と。