Fellows! Volume3

Fellows! 2009-FEBRUARY volume 3 (BEAM COMIX)

Fellows! 2009-FEBRUARY volume 3 (BEAM COMIX)

確かそろそろVol.4がリリースされる頃ではあるけど、Vol.3のことをエントリしていなかったので。作家陣個別にどうこういうつもりはあんまりないんだけど、巻を重ねるごとに「どういう方向性を狙っている本なんだろう」という疑問が少しずつ沸いてきている。もっと言ってしまえば、『独自色の強い"実力派ベテラン勢"*1を提供、同時に彼等を撒き餌』として、

  • 通常の商業誌では掲載が難しい傾向/テーマの作品(成人向け作品以外)を描くための雑誌
  • 少年誌傾向以外の作品として実力は認められるものの、順番待ちをしている新人を世に出すための雑誌

のどちらなのだろうか、と。
最初の頃は、「現在の(商業的な意味での)漫画業界では受容されにくい作品を世に出すための"舞台"」という脳天気な希望を持って眺めていたのだけれども、Vol.3までを見て少なくともそう言う考えはほとんど消えかけてしまっている。それは、毎回のように様々な傾向の作品をとっかえひっかえ「新人作品」として弾を撃ち続けている上、その入れ替わりが異様に激しいことから出てきている感想だ。組織変更の季節柄なのか、他の老舗の漫画雑誌でもそれなりの実力がある作家の連載が終了し、新人や名の知られていない作家が「新作」として掲載されることが多いように見受けられるけど、独自色の看板を掲げたFellowsがそれに追随しなくては行けない理由は編集方針からするとあまりない(会社方針としてならありうるけど)。志は高かったけど、どーにも妙なんだよねえ。
その上で、Vol.3で気になった作品を列挙。なお、森薫、入江亜紀の両名はお気に入りだし問題もなかったのでコメントなし

  • 久慈光久狼の口〜ヴォルフスムント〜」:インパクトNo.1。この人、骨太でシンプルな線なのに男性・女性とも非常に魅力的な絵を描く実力があるんだけど、その物語はどれも過酷の一言。それはキャラに対してだけではなく、読者に対しても過酷な物を突きつけてくる。特に作中の女性キャラへの扱いは「なにかトラウマでもあるのか」と思うくらい。特に本作を読んで「想像通りの展開だった」と思った人は、この作家を良く知っている人か、もとよりそういう傾向の作品が好きな人だけだと思う。ただ、それを悪い物とは思わない。たぶん、この作家はそういう精神的極限に近い状態のキャラを描くことが(そしてそれをうまく誤魔化して読者に提示することが)得意な作家なんだろう。だから、「え・・・まじでこのエンディングかよ!うそだろ!」と思った一人としてあえて彼に伝えたい。「おk。もっとやれやれ」と。
  • 鈴木健也「蝋燭姫」:細密画傾向のある面白い絵を描く人だと思う。ただそのためか、「動きそのもの」ではなく「動きの瞬間を一コマ切り取った」絵になっているのが特徴であり欠点でもある感じ。もう少し線を少なくして、台詞なしで絵単独でキャラの心理描写を描くことができれば嬉しい。
  • 木静謙二「奉姫」:・・・こんなにうまそうに飯を食うキャラは久しぶりに見た。場面描写ごとの絵の硬軟も非常にうまい。読み切りとのことだけれども、このキャラ陣を使った別のエピソードも是非見てみたい。
  • 笠井スイ「仏頂面のバニー」:ネタ一発勝負の勝利。やられた(苦笑)。それにしても、胸や背中のラインではなく、ストッキングのラインにまず目が行ってしまったのは年齢を重ねたせいなんだろうか。

*1:商業的量産型ではなく、芸術的手工業型ということ。十分な独自世界を構築できる作家として定義。