ミスミソウ(3)

ミスミソウ 【三角草】 (3) (ぶんか社コミックス)

ミスミソウ 【三角草】 (3) (ぶんか社コミックス)

この作品とは店頭でのジャケ買いで始まった。なので、作家自身の本来の居場所がギャグと知って当時は大いに驚いた。その気持ちは今でも変わっていない。そして、その気持ちをさらに裏付けるように、この最終刊は既刊2冊よりも凄惨で悲しい。
作中で描かれている人物の行為はひたすら残虐だ。しかし各人物の気持ちを考えていくと、その行為は、際限のない孤独と悲しみによる思考の自己閉塞の先にあったものでしかないことに気がつく。あれは単なる結果でしかないのだ。誰もが生きることに真面目すぎた。主人公達も苛める側も。それを考えるとただひたすらに悲しくなる*1。作家とスタッフは、よくここまで作品を作り上げたと思う。大変素晴らしい出来としか言いようがない。
そして思い出したことがある。ずいぶん昔に、赤塚不二夫鴨川つばめ等のギャグ畑での大家や実力派をテーマにした評論本を読んだ。そこで作家や評論家が繰り返し述べていたことがある。

「ギャグは世の中をじっくりと見て、問題やズレについて散々に考え悩む必要がある。そしてそこで見えた本質を、あえてギャグ(笑い)として昇華させる。だから、楽しいと同時にとても苦しいし、ギャグ作家として長続きすることがとても難しい。」

作者たる押切蓮介もその域に達したのかもしれない。

*1:虐めを受けた経験があった人なら、さらに強く思うだろう。