降臨!ボーカロイド マル秘 名曲大全 (洋泉社MOOK)

降臨!ボーカロイド マル秘 名曲大全 (洋泉社MOOK)

降臨!ボーカロイド マル秘 名曲大全 (洋泉社MOOK)

タイトルや表紙の絵だけ見ると、「マイナー系出版社がブームを当て込んで適当にでっち上げた本」のように見えたけど、実際中を読んでみると結構理念の通った「音楽史の面から見たボーカロイド考察」という内容だった。予想外の当たり。
初音ミクボーカロイドブームについての評論本はいくつも出ているし、その中の数冊は実際に読んでも見たが、この本はその中で「敷居が低く、分かりやすく、でも萌えや媚びに走っていない」というボカロ考察の入り口としては非常に良くできた内容だと思う。ニコ動上に存在する動画の紹介も「ボーカロイド」という現象の枠で捕らえているため、「名曲/迷曲」に限らずPV系、技術部系、漫画&自作アニメ&踊ってみた&亜種と幅広く、かつまんべんに紹介している。その数なんと200曲。しかも、その全てに10行以上の評価文が付いているという気合いの入りよう。
この本を作った動機が「今のネット住人&若者界隈だけのムーブメントだと、いつかは歴史の荒波に消えてしまう。なんとしても、既存の音楽シーンをひっくり返しかけているボカロムーブメントとその多様性を「紙メディア」として残しておきたい」という編者の意気込みは、確かに嘘偽りはない*1。もちろん音楽史ベースで語っているシーンが多いので、そう言う部分はとっつきにくいきらいはあるものの、有名人からのコメントや感想はどれも前向きで読んでいて不快になることは滅多にない。
初音ミクをはじめとするボーカロイドムーブメントを少し俯瞰して見てみたい」という方は勿論、「お手軽にオススメ動画を探したい」「自分が知っているあの曲の評価はどうだろうか」という人にも読む価値はあると思う。

*1:「紙の本」というものへの権威思考もあるが、それ以上に電子データのメディアとしての寿命は、紙と比較すると圧倒的に短いという事実がある。また、メディアがあっても再生機がなければゴミにしかならない。保存状態さえ良ければ、紙は数百年でも残る。