涼宮ハルヒの消失

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2時間程度と勝手に想像していたので、見終わった後に3時間近く過ぎていたことに驚いたのはともかくとして。冒頭部のキョンの焦燥感の描き方とその感情を観客にシンクロさせる過程が見事だった。そのため、その後の展開において内気眼鏡読書少女な長門とか、世話焼き委員長モードの朝倉さんとか、ロンゲ&ポニテモードのハルヒとかに萌えるヒマもなく、ただひたすらキョンの感情をトレースしたままラストに至ってしまうという弊害もあったが。そう言う意味では、なにかとても損をした気分ではある。「消失」ってのは長門に焦点を当てて、彼女自身と彼女の暴走体に萌える物語なのが本来といえるのだから…まあ、それはいいや。
ただ、「これは絶対に劇場版にしなくてはいけない」というほどの強い動機も感じられなかった。3時間、テレビで言えば6話分。エンドレスエイトの回数浪費、および過去回の再放送を考えれば、十分消失を納める尺はあったはず。確かに、テレビシリーズであれば見ていて感じた「キョンの焦燥感」をここまで身近に感じることはなかったろう*1けど、でもその程度の話でもある。何より、OPが新曲でもなく、第二期OPでもなく、初代OPを持ってきた(映像は違うけど)ことに、何か制作側の意図が感じられなくもない。映画自体は悪くない出来だと思う。ただ、第二期(あるいは再放送)という編成内容に感じた疑問を解消されるようなものではなかったのも事実だった。
さて、これで「涼宮ハルヒの憂鬱」という作品は、事実上手駒が無くなった。映像化されていないエピソードはあるけど、それは「消失」以上の期待感を持たされる内容でもない。原作はずっとフリーズしっぱなしで、表紙イラストの差し替えという再販商法まではじめる始末。「涼宮ハルヒ」シリーズという商材がココで終わるのか、再販商法を続けるのか、新しい一歩を踏み出すのか。それは一ファンとして見守っていきたい。

*1:重ねて言うが、ここまで没入し魅せられる作品に作り上げたスタッフは素晴らしい。