「宮崎県青少年健全育成審議会の概要」がひどい件

http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/chiiki/danjo/kenzenikusei/gijiroku01.html
東京の都条例をきっかけに、各地で「青少年保護の美名の下で行われる表現規制」の動きが活発化していることは周知のとおり(大阪とか京都とか)。で、宮崎県で行われた「青少年健全育成審議会」の議事録が公開されているのだが、その内容がかなりひどい(第1回審議会議事録(平成22年5月14日開催)参照)。
まず「基本的に傍聴不可」「議事録の発言者はすべて匿名」という状況。これは今回の都条例よりもひどい。都条例も会議は非公開ではあったものの、議事録はちゃんと発言者氏名が明記してあった。つまり、どれだけ後ろめたいことをやっているのかということを、彼ら自身が認識している証拠でもある。

B委員
「美少女秘密探検」*1についてですが、色々な有害図書がある中で、見るに堪えない恐ろしさを感じます。児童ポルノに関しては、アニメであっても厳しくする必要があると思います。
事務局
私たちも、様々な有害図書を見ていますが、その中でもあまりにも規範意識がなさ過ぎると感じています。
B委員
この作品は、分別販売以前の問題で、作者のモラルを疑います。
表現の自由を超えて、犯罪である思います。
D委員
東京都の青少年健全育成条例改正案に対して漫画家の方等が表現の自由を訴えていますが、この作品を見てどう思われるのか聞いてみたいです。

まず、この会議は「有害図書類の指定」をする会議なので粛々と指定すればよいだけの話。特に、B委員は「児童ポルノ=アニメも含む」という致命的な勘違いをしている(児童ポルノは「児童の性的虐待物の副産物」を指す。つまり実際に被害を受けた実在の児童の存在が大前提)。そしてそれを指して「表現の自由を超えて犯罪である」と断言。つまり、社会に対して悪しき風潮のものを創作物として思考・表現すること自体を「犯罪」と明言したわけだ。このB委員がどなたかはわからないが、宮崎県にも強硬な規制派がいることがはっきりした。
また、D委員の発言の言いたいことはわからないでもないが、それはこの会議の職分を逸脱している。あえて言えば、

「当然ひどいものもあれば良いものもある。だが、その本は成人指定されているマンガであり、通常の棚には並ばない(自主規制でゾーニング等がなされているだろう)。そもそも青少年健全育成の観点で言えば、「その本が一般書棚で販売され、青少年(18歳以下)が容易に触れることが出来る状態にあるかどうか」こそが問題であり、そうでないものについて注意喚起を促したり、有害指定をするのがこの会議の場ではないか」

ということではないだろうか。魔女狩りの結果「一つがあったから全てを滅する」というのは、もっとも避けるべき思考の一つだ。
また、「4.「東京都青少年の健全な育成に関する条例の改正」」を見る限り、各委員は東京都の方針に全面賛成の状態だ。ただ、そのコメントを見ると(やはりと言うべきか)この問題の本質がまったく理解されていない。

D委員
漫画と言うことでひとくくりに議論されているようですが、これだけ色々な種類の漫画があるということを知っているのか疑問に感じます。

この件について声を上げている人は当然知っている。むしろ規制側が「極端な一部の例だけを知っている」ケースが多い。そして逆に言えば、このような「色々な種類の漫画がある(清濁ごちゃ混ぜ)」から今の日本漫画の発展があるのも事実。だが、その問題とは別として、「この手の漫画の存在自体が悪」という前提のみで語られていて、ゾーニングや成人指定などといった業界側の自主規制対応などについては全く理解が至っていない。
つまり、「嫌い」「理解できない」「心配」という感情のみが先走り(気持ちは分かるけど)、実態としてどうなのか等の客観的データがまったく考慮されていない。東京都も大阪も京都もそうだけど、ことこの件については規制派は誰も冷静になれない。
そして同時に、「東京で可決すれば、全国に一気に波及する」という話が実態としても見えてきてしまう。

*1:探してみたけど見つからなかった…。とあるゲーマーの捜索日誌 : 宮崎県:平成22年度 第1回宮崎県青少年健全育成審議会を見ると「美少女秘密体験」ではないかとのこと。