アンブロークンアロー 戦闘妖精雪風

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

購入していたのに、自分でも分からない理由で積んでいたが今回読了。やはり私は神林長平の言葉や論理展開が大好きなことを再認識する。
この物語の凄いところは、昨今のともすれば「機械の擬人化、信頼」なんてエモーショナルな方向に行ってしまいがちな展開を、あくまで「機械と人間」という枠組みで守り通したと言うこと。そして、そういう形ですら、関係性は作られる。まるで認識の異なるコミュニケーションだけれども、然るべき手段と思考と想像力、そして「対象がなんであれ、そのことを考え相互理解*1に務めれ」ば、対応ができるということを書き記してくれた。
神林長平の登場人物は皆前向きだ。個々人によりその表現や認識手段は異なるものの、彼らが絶望に苛まれるシーンは極めて想像しにくい。そしてその理由も明確だ。彼らは常に「戦場にいる」と自らに言い聞かせていることだ。あまりに平和であまりに日常であっても、自らの存在そのものを排除しようとするに敵対的な《何か》があれば、徹底的に戦う。それやそのような事象に対して、彼等や神林は極めて端的な言葉で説明する。だからこそその一言、そのタイミングが素晴らしいのだ。
それにしても、ラストの一連の展開を読んでいて、なぜかちょっと涙が出そうになった。理由はまだよく分からない。

*1:「平和のための」ではない。