アンブロークンアロー 戦闘妖精雪風
- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07
- メディア: 単行本
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この物語の凄いところは、昨今のともすれば「機械の擬人化、信頼」なんてエモーショナルな方向に行ってしまいがちな展開を、あくまで「機械と人間」という枠組みで守り通したと言うこと。そして、そういう形ですら、関係性は作られる。まるで認識の異なるコミュニケーションだけれども、然るべき手段と思考と想像力、そして「対象がなんであれ、そのことを考え相互理解*1に務めれ」ば、対応ができるということを書き記してくれた。
神林長平の登場人物は皆前向きだ。個々人によりその表現や認識手段は異なるものの、彼らが絶望に苛まれるシーンは極めて想像しにくい。そしてその理由も明確だ。彼らは常に「戦場にいる」と自らに言い聞かせていることだ。あまりに平和であまりに日常であっても、自らの存在そのものを排除しようとするに敵対的な《何か》があれば、徹底的に戦う。それやそのような事象に対して、彼等や神林は極めて端的な言葉で説明する。だからこそその一言、そのタイミングが素晴らしいのだ。
それにしても、ラストの一連の展開を読んでいて、なぜかちょっと涙が出そうになった。理由はまだよく分からない。
*1:「平和のための」ではない。