NHKスペシャル「復活〜山田洋次・SLを撮る〜」

NHKスペシャル
大半の視聴者はこう思ったと思う。「とりあえず山田監督どいてくんない?」と。
この平成のご時世に蒸気機関車のフルレストアなんて見ようと思っても見れるものじゃない。それをNHKのカメラがかぶりつきで取材してくれると言うんだからそら期待しますよ。実際「おおっ!分かってるじゃん!」というような絵も多く魅せてくれたし、その点については大いに満足してる。実際ネットの実況を見ても「鉄オタじゃないけど、これが凄いってのは分かる」というコメントも多かった。
でも、やっぱズレはあった。視聴者の多くは「蒸気機関車の復活」が見たいわけであって「山田洋二監督の蒸気への想い」を聞きたい訳じゃなかったはず。でも、実際の番組はまさに『山田洋二が』SLを語った内容だった。蒸気の歴史として「あじあ号」を出すのはまあいいとしても、なんでそれであんなに尺を採らなくてはいけないのか。中国人の国民感情について解説する必要すら不要だ。だって、どう考えてもNHK取材陣(きっと鉄オタもいたに違いない)や山田組撮影班が取材した多くのC61レストア映像は、どれもお宝映像満載の筈だもの。NHK特集の取材班&ナレーターだけで2時間スペシャル組んで、ひたすらその映像と解説とドキュメントをするだけで大いに価値のある物になったはずだし、それでも足りなかったはずだ。だけどそれをしなかった。その理由がまるで分からない…あるいは山田洋二監督を客寄せパンダにしたかったのかもしれない。蒸気にあまり興味がない人にも見てもらおうという理由で。だけどそれは蛇足に過ぎた。どうせ使うなら、最近NHKにも良く出るタモリに出てもらえば良かった。彼はコメディアンであり重度の鉄オタ(線路だけど)である以上、山田監督よりも視聴者の見たいことを理解できているはずだったろうし。
ともあれ、素晴らしい素材が山のようにあったろうに、その多くを死蔵してしまったこの番組のコンセプトがとても残念だ。