ドワンゴとクリプトンと初音ミク

着うた配信及び今後の協業に関する共同コメント‐ニコニコインフォドワンゴ側)
着うた配信及び今後の協業に関する共同コメント – SONICWIREブログ(クリプトン側)
「初音ミク作品」騒動、ドワンゴとクリプトンが“和解”コメント - ITmedia ニュース(主なニュース)
クリスマスを挟んでネット界隈をにぎわせたこちらのテーマだったけど、ひとまず手打ちとなったようで。共同声明の内容を見る限りでの印象はこんな所。

  • 主張としては、ほぼクリプトン側の勝利
    • これまでクリプトンが主張してきた内容や提示された疑問点については、ほぼ全面的に共同声明に盛り込まれる形になっている。さらに、実質的なJASRAC完全管理体制についても両者共同で疑問を呈するコメントを発表できた。複数企業が公の形で現在の音楽業界(特にJASRAC体制)について疑問を発することが出来た点だけでも、クリプトン社長としては大きなポイントではないだろうか。(昔、実際にあったJASRACによるMIDI-DTMブーム壊滅作戦の被害者らしいし)
  • ドワンゴは戦術的撤退
    • ビジネス方法論の是非はともかく、主要な顧客であるネット住人や(クリエイターになるかもしれない)職人にこれ以上そっぽを向かれることを嫌ったのか、ドワンゴ側の主張はほとんど声明には入っていない。これは想像だが、初音ミク&職人達の囲い込み、ひいてはドワンゴでの完全管理をもくろんでいた作戦がほぼ完全に暴露された上、ドワンゴ側声明の手際の悪さも手伝って(さらにネット上であっという間に情報が広がった)、これ以上被害が広がる前に全面撤退をすることで、被害を押さえることを選択したのだろう。
  • ドワンゴの得た物は
    • とはいえ、手ぶらというわけではない。まず、公式に「ドワンゴ単体での謝罪」の必要がなくなった。しかも、それらについては今後一切不問に付すという条項がつくので、以後ネット住民が騒いでも問題がなくなる(騒いでも、それは同時にクリプトンにも文句を言っていることになる)。これは、企業イメージとしては得となる。さらに、今後はクリプトンをビジネスパートナーとして、堂々とVocaloidを使った商品戦略を練ることができるようになった。・・・つまり、ドワンゴとしては「名を捨て、実を取った」と言える。

ただ今回の共同声明には、鏡音リン・レンやそれ以降のVocaloid戦略の話は出ていない。流石に同じ方法論をドワンゴが繰り返すほど愚かではないと思うが、上記声明は明らかに「初音ミク」限定の内容になっているのが多少気にかかる。そして、今回の共同声明に出ていない「裏の取引部分」で何があったのか(ここまで大事になった上、クリプトン側でもニコニコに変わる新しいVocaloid発表の場を作りつつあったんだから、何もなかったとは思えない)・・・それは、今後見ていくウチに透けて見えてくるのかもしれない。
個人的には、普段見ることが出来ない音楽業界の(世間ズレしすぎている)商慣習の話、著作権や管理権に関わる様々な話、ビジネスにおける公的文書と見せ方・・・等々、非常に興味深く見させてもらった。もちろん、Vocaloidのいちファンとしても非常に気にしていたけどね。
それにしても・・・ミク、お前はあと何回戦えば、大好きな歌を、無邪気に歌えるようになるんだろうな。