軍事学入門
- 作者: 別宮暖朗
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/06
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 85回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
戦争や兵器に興味があるからと言う理由で手を出してみたけど、この本を読んでの最大の感想は「もしかしたら軍事学は究極の実学かも」というもの。人間の根源欲求に近い行動を"社会"レベルに拡大した状態での"人間&組織行動学"と感じたからだ。そして、「一番戦争に慎重なのは軍人である」という理由も良く分かる(戦争という行為がそう簡単に起こせないということも)。人間が進化できたのは根源欲求を理性で抑えつけることが出来たからと言えるけど、その理性があまりにも肥大化してしまうと、事の本質と人間の本来を見失い、当たり前のことに気がつかなくなり、結果「平和」というものの有り様を取り違えてしまうことが多くなってしまうという話。その一番危うい立ち位置にいるのが、まさに今の日本の社会状況であることに恐怖すら覚えてしまったけど。闘わなければ、武器を捨てれば、"無防備都市宣言"を(その本質すら理解しないまま)すれば平和になるに決まっている・・・という思考こそが、本当のファンタジーであることに気がつかなくなっている人が増加している日本では。
「臆病なだけにもかかわらず、ハト派のフリをして口先で平和を唱え、隣国と友好第一を唱える人物が、実は平和にもっとも危険なのです。」(本文より抜粋)
「平和」というのは状態じゃない。様々な人間と、その人間達による社会・組織の思惑の結果による化学変化とバランスが、たまたま「平和という事象」を生み出しているに過ぎない。だから、「平和である状態そのもの」を維持・再現しようとしても、それは「土台が壊れていることに気がつかず、頂上の砂山だけを維持しようとしているだけ」という滑稽な姿でしかないんだろう。